図書室その2

□ 3 動く、止まる、軋む
1ページ/5ページ


それは、どこにでもあるような悲恋の物語。

そして、どこにでもある真実。

そこに綴られた偽りの中に、真実は隠されていた。

偽りは真実を覆い隠し、真実はその広大さゆえに虚偽めいたものに変わっていく。

真実が真実でなくなり、虚偽が真の事象であるかのようにのさばる。

偽りは偽りで、真実も真実でしかない。

そのことに気づくのはほんの一握りの存在で。

真実を伝えることなく、滅びていく。

真実は虚偽に溺れ、日の目を見ることなく忘れられていく。

その物語をつづった本人でさえも。

真実は限りなく広大で単純。

それゆえに見落とされ、忘れ去られていった。











かぎりない時間の中で、全て消えゆく。

みなが皆、踊らされている。

はじめから自由などない。

あらかじめ決められた戯曲を演じ続けるだけ。

いくら抵抗しようと無駄。

しらず知らず組み込まれる。

ただ、その糸は脆く儚い。

ひとたび縺れれば糸は終わる。

とうてい誰も気づかない綻び。

おわりは確実に近づいている。

うみ出されたのは偶然。

しくまれた滅亡への道。

ないても笑っても、後悔はしないように選ぶ。

つよがりでもいい、ただ後悔だけはしたくないから。

ただ前を見据えて歩き続けよう。











動き始めた歯車は、動き、止まり、軋み、また動く。

真実が明かされるまで、終わることのない、流れ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ