図書室その2
□ 3 動く、止まる、軋む
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それは、どこにでもあるような悲恋の物語。
そして、どこにでもある真実。
そこに綴られた偽りの中に、真実は隠されていた。
偽りは真実を覆い隠し、真実はその広大さゆえに虚偽めいたものに変わっていく。
真実が真実でなくなり、虚偽が真の事象であるかのようにのさばる。
偽りは偽りで、真実も真実でしかない。
そのことに気づくのはほんの一握りの存在で。
真実を伝えることなく、滅びていく。
真実は虚偽に溺れ、日の目を見ることなく忘れられていく。
その物語をつづった本人でさえも。
真実は限りなく広大で単純。
それゆえに見落とされ、忘れ去られていった。
かぎりない時間の中で、全て消えゆく。
みなが皆、踊らされている。
はじめから自由などない。
あらかじめ決められた戯曲を演じ続けるだけ。
いくら抵抗しようと無駄。
しらず知らず組み込まれる。
ただ、その糸は脆く儚い。
ひとたび縺れれば糸は終わる。
とうてい誰も気づかない綻び。
おわりは確実に近づいている。
うみ出されたのは偶然。
しくまれた滅亡への道。
ないても笑っても、後悔はしないように選ぶ。
つよがりでもいい、ただ後悔だけはしたくないから。
ただ前を見据えて歩き続けよう。
動き始めた歯車は、動き、止まり、軋み、また動く。
真実が明かされるまで、終わることのない、流れ。