短編小説

□割れた金魚鉢(終)
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赤いものをあげるとなんでも喜ぶようで
暇があればいろんな赤いものをあげた。
私だけではなく家族も同じ考えだったようで、家の中の家具が自然と赤いものが増えていた。

その時点でおかしなことに気がついていれば良かったが、
誰もそれに気がつくことなく一年の月日が過ぎていた。

亜美ちゃんも小学生の年になるということで、真っ赤なランドセルを買ってお母さんが帰ってきた。

「亜美ちゃん!ほら!買ってきたわよ!」
赤いランドセルを差し出すと、
亜美ちゃんは不思議そうに
「なにこれ?」
と首をかしげた。

「ランドセルを背中にからって4月から亜美ちゃんも小学生になるのよ!!楽しみね!!」

亜美ちゃんは笑っていた顔から一変、眉を下げて不機嫌そうに言った。

「私、家から出ない。」

「え?」
お母さんだけではなく、その場にいた全員が驚いた。
私はその表情にゾッとした。
この子は何かおかしいのではないかとその時やっと気がついた。
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