ゾルディック家編
□#24 素直にならなきゃ
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─特訓 三日目─
動く度にギシギシ鳴る音が、鬱陶しい。
ゼブロに勧められ、ジュリたちは毎日50キロもあるベストを羽織って生活している。
「ジュリー!!」
裏庭で草むしりをしていた彼女のもとへ、ゴンが駆け寄って来た。
最終試験でハンゾーに左腕を折られた彼は、人一倍不便な身体のはず。
しかし、そんなことを微塵も感じさせない足取りは、彼の野性的な生命力を物語っているようだった。
「掃除終わった?」
「…あと少しよ。
動くだけでも精一杯だから、時間かかっちゃって。」
自嘲気味に笑う彼女に、ゴンは「俺も手伝うよ」といって隣に腰掛ける。
ここ三日で、身体はもうボロボロだ。
しかし慣れとは恐ろしいもので、初日は引きずるのも辛かったスリッパを、今では浴衣の下駄並には履きならすことができている。
全身に襲いかかる50キロの重りも、その内あまり気にならなくなるのだろうか…。
淡々と草引きを行う中、ジュリはそんなことを考えていた。
小さいとはいえ、一国の王女である彼女のこんな姿を見たら…
祖父や国民はさぞかし驚くことだろう。
「ねぇ、ジュリ。
ジュリはキルアに会ったら、まず何て言う?」
「…えっ」
不意を突かれたジュリは、裏返った声を出す。
「俺はね、お帰りって言ってあげるんだ。
ジュリは?」
「…。」
二人の間に、暫しの沈黙が流れる。
ジュリは少し気まずくなり、チラッとゴンの目を見た。
柔らかな彼の瞳と視線がぶつかる。
急かすでもなく、呆れるでもなく…
ただ黙ってジュリの答えを待っている。
その目に誘われるように、彼女はゆっくりと話始めた。
「…どうしてボドロを刺したのって。
あの時、何で自ら失格を選んだのって。
聞きたい。」
「…うん。」
優しい彼の相槌により、ジュリはどんどん言葉を繋ぐ。
「それからね。
最後に言った“ごめん”は、何に対しての“ごめん”だったのかも聞きたい。」
そこまで話した後、一呼吸置いてこう言った。