ハンター試験編

□#01 旅立ちの日
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「それじゃあ…ディーノ、ラキ、行ってきます!」

1月。

小さなカバンを抱えて、一人の少女が大声で叫んだ。

「ふむ。
行ってこい。」

「アイリ〜!
お前なら絶対ハンター試験に合格するよ!

だから頑張れっ」

「…うん。

二人と暫く会えないのは寂しいけど、強くなるためだもんね。」

さっきまでの威勢の良い声とは打って変わって、少女アイリは不安そうに肩を落とした。

ここはパドキア共和国の端の山奥。

今日、ここで アイリ は、七年共に過ごしてきた二人の元から旅立つ。

オレンジのショートヘアがよく似合う、活発な女の子だ。

「まぁ、そんなに心配せんでもええ。

あまり気張りすぎるのは良くない。」

そう諭すように語りかけるのは、間もなく85歳になろうというのに、未だ勢力が衰えないディーノ。
 
白髪で小柄な老人ではあるが、筋肉質な逞しい体を持っている。


彼は考古学者として、この世界のあらゆる歴史を解読し、書き記している。

ハンターでないとはいえ、知ってはいけない謎や過去を暴く仕事には敵も多くいる。

そのような輩から身を護るため、若いころから身体を鍛えてきた。


「ディーノ…ありがと!

それと…
今まで育ててくれたことも!

本当に感謝してるよ。」

アイリはディーノの手を取ると、ぎゅっと握り締めた。

「…よさんか。

永遠の別れじゃあるまいし。」

照れ隠しなのか、アイリと目を合わせないよう、わざとそっぽを向いて呟く。

「ちょっとちょっと、お二人さん!

俺のこと忘れないでよねー。」

そんな二人の様子を見ていたラキが、横から勢い良くアイリとディーノの肩を抱いた。

「あはは、ごめんラキ。

あんたも本当ありがとう。

あたしたち、血は繋がってないけど本当の兄妹みたいだったよね。」

「そうだな♪

俺たちディーノに拾われてなかったら出会ってないわけだけど、ずっと一緒だった気がするよ。」

二人の会話を聞きながら、ディーノはラキやアイリと出会った日のことを思い出した。
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