ハンター試験編

□#02 一緒に行こう
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山を下り、パドキア共和国の市街へ向かったアイリ。
明日ここから出向する船の予約を取り終えると、ひとまず観光することにした。

『ずっと山にいたから気付かなかったけど、街の方はこんなに栄えてたんだ〜。』

パドキア名物の食べ物や、お土産品を眺めながら人の流れに沿って歩く。

警戒心など少しも持たず歩いていた彼女だが、向こうから迫ってくる異常な殺気に気付くと足を止めた。

『…っ!何この気配…。尋常じゃないよね!?』

無意識のうちに体に力が入る。額には冷や汗。

考古学者としての能力はなかったにしても、最低限の戦闘技術はディーノから教わってきた。

だからアイリ自身、一般人に比べたら自分はやれる方だと思っていたのだが…
この殺気には息を呑む。

人の流れに乗ってやってくるそのオーラの持ち主は…


『…!?子ども!?』

アイリの目に入ったのは紛れもなく少年だった。

しかし、彼から放たれる殺気やオーラ、容姿までもが何か他の子どもとは違う。

銀色のくせ毛をなびかせ足音を殺すように歩くその少年。
猫のように吊り上った大きな瞳は何の輝きも映してはいない。

右手に抱えているのはスケボーのようだ。

妙に大人びたこの少年を唯一子どもらしく見せるはずのそれも、この子にとっては違和感でしかない。



アイリはすれ違う瞬間、思わず息を殺してしまった。

そんな彼女の様子に気付くはずもなく、銀髪の少年は無表情のまま歩き続ける。

風に乗ってかすかに血の匂いがした。

『なんなの、あの子…。』



これが、キルアに対するアイリの最初の印象である。

こんな街中を歩いている少年が、つい先ほど実の母親と兄を刺して家出していると、誰が気付くだろうか。

アイリでなくとも気付くはずがない。

二人の出会いはそんな奇怪なものだった。
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