ヨークシンシティ編
□#42 再会
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8月31日。
クラピカたちノストラードファミリーは、今ヨークシンに向かっている。
今後の予定を話し合い、暫しの休憩を言い渡されたクラピカは、もう目の前に迫っているヨークシンの街を飛行船から眺めた。
ようやくこの日が訪れた。
この場所に、必ず奴らは現れる。
幻影旅団ー…………
一刻も早く、奴らをこの手で捕らえたい。
そして………
あのオレンジの髪に触れたい。
「着いてからの任務、私たちほとんど別行動だね。」
「………。」
「残念だな。
私センリツと交代して欲しいな。」
「やめろ。」
またしてもアイリのことを考えているところを邪魔された。
セナはいつもこのタイミングで現れては、どうでもいい話をしてクラピカを苛立たせる。
「どうして?」
「私はお前と関わりたくない。」
「私はクラピカくんの側にいたい。」
毎度のことながら、セナとの会話は今日も成り立たない。
こちらの言い分は華麗にかわされ、キャッチボールにならないのだ。
「クラピカくんがどんなに私を拒絶したって無駄だよ。
そんなことで私の心は傷つかないもの。」
「……。」
「大切な人を失うくらいなら、側にいて嫌われる方がよっぽど幸せ。」
「……。
そのような経験が?」
「うん。
私もね、家族みんな殺されたの。」
初めて自分に興味を示してくれたことが嬉しかったのだろう。
話の内容とは裏腹に、セナは少し微笑みながら答えた。
「当時世間を賑わせてた連続放火魔にみんな焼かれたの。
たまたま出掛けてた私だけ助かった。
火は隣の家にも移ってて、ずっと好きだった幼なじみも死んじゃった。」
「それからどう暮らしていたんだ?」
「両親は駆け落ち同然で他に身寄りもなかったし、一人旅に出て念能力を身につけたの。」
「……そうか。」
こんな風に二人の会話が成立したのは初めてかもしれない。
セナは満足そうに話を続けた。
「私、ずっと一人で生きてきた。
このノストラード家の人は私を大切にしてくれるけど、それは仕事のため。
心はずっと孤独だったの。
クラピカくんの記憶を読むまでは。」
「……。」
「やっと分かり合える人に出会えたと思って嬉しかった。
私、クラピカくんのこと好きになっちゃったみたい。」
最後の一言を聞いても、クラピカは驚かなかった。
セナの気持ちは薄々気付いていたし、第一それを伝えられたところで、自分にはどうしてあげることもできないのだ。
クラピカの頭の中はいつも蜘蛛への復讐とアイリのこと。
他の人が入り込む余地なんてない。
「気持ちだけ有り難く受け取っておく。」
いつものように冷静な表情と声でそう答える。
「うん。
それでいいの。
私はただ、あなたの側にいられればいいから。」
こちらもいつもと同じ儚げな表情と、いつもと同じでクラピカの感情なんてまるで無視な答えを返す。