ヨークシンシティ編
□#44 運命の定め
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ホテルのロビーでは、キルアが一人ソファーに腰かけていた。
先程、泣き崩れるように叫んでいたアイリの言葉が何度も頭をよぎる。
【クラピカに、復讐なんてして欲しくないよ……。
例え旅団だとしても…クラピカの手で人を殺めて欲しくない……。】
──人を殺めて欲しくない──
そりゃそうだ。
普通の人間ならそう思う。
どんなに憎い相手だろうと、「殺す」には相当の覚悟がいる。
人の命を奪うということは、その後の人生を大きく変えるということだ。
例え復讐であろうと、「殺した」あとには罪悪感や嫌悪感が付きまとう。
例え復讐であろうと……
じゃあ、俺は??
復讐でも、正当防衛でも、何でもない。
「仕事」として、面識もない人物を簡単に「殺す」俺は…?
人を「殺して」稼いだ金で
産まれて、育って、生きてきた…
俺は………
一体何なんだ。
「普通じゃない……。
やっぱ生きてる世界が違うんだ。」
小さな呟きが、誰もいないロビーに木霊する。
自動販売機が稼働する微かな音だけが、耳なりのようにキルアを襲っていた。