ヨークシンシティ編
□#52 生きる術
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数時間ぶりにアイリの姿を見た。
いつになく緊張した表情の彼女。
しかし、無事に人質交換が終わると、屈託のない笑顔で私の胸に飛び込んできた。
「……アイリ、無事で良かった。
危険な目にあわせてしまい、本当にすまない。」
「あたしは大丈夫。」
そう言って、ぎゅっと力強く私を抱きしめる。
「クラピカ……
辛かったね。」
「……っ。」
「いっぱい悩んだよね。」
「……アイリ。」
「…今はもう、何も考えなくていいよ。」
「……。」
「あたしが傍にいるから。
だから、そろそろゆっくり休もう?」
「……あぁ。
ありがとう。」
そうして私も、彼女を力強く抱きしめた。
壊れそうなほど、強く、強く…。
アイリ……
死が全く怖くない私は、いつのまにか何処か遠くへ消えてしまったよ。
今はただ、君を失うのも、君を残すのも恐ろしい、臆病な人間だ。
それはクルタ族を亡くして以来、初めて沸いた願い。
私は、生きたい。
アイリと共に生きたいんだ。
そんなことを考えていると、いつの間にかジンジンと頭の中が痺れてきた。
遠くで私の名を呼ぶ彼女の声が聞こえた気がした。
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