ヨークシンシティ編
□#53 新たな旅の始まり
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9月6日
相変わらず眠り続けるクラピカの傍で、アイリは彼と出会った日のことを思い出していた。
ハンター試験の一次試験。
キルアのスケボーから見た金髪に、不思議と目を奪われた。
その主が気になり、去り際に横顔を盗み見た時─…
時が止まったような感覚に陥った。
あの瞬間からずっと、今も変わらず彼に恋をしている。
そしてあの日からずっと、クラピカの幸せだけを願うと決めた。
『クラピカ……
お願い、目を覚まして。』
アイリはぎゅっと、彼を握っていた右手に力を込める。
その時だった。
「………ん。」
「─…クラピカっ!?」
「………アイリ。
私は一体─…」
目を腫らしているアイリに戸惑いながら、クラピカはゆっくりと辺りを見渡した。
そこには彼女の他にレオリオとセンリツ、そして頬にいくつもの涙の筋を作ったセナがいた。
「貴方、丸二日以上も寝ていたのよ。」
センリツが心底心配した様子でそう言う。
「…丸二日?
ボスは…
競売はどうなった?」
「結局中止よ。
来年からもないみたい。
ボスも自宅へ帰ったわ。」
「そうか……。」
身体中を襲う気だるさと、何もかもが終わったのだという脱力感で身動きが取れない。
ただ、アイリに握られた右手だけは強く握り返していた。