ゾルディック家編
□#25 誰よりも強い
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─特訓 五日目─
「おりゃーっ!!」
重たいベストを身につけたまま、レオリオは力いっぱい腕を振り下ろした。
ゼブロたちに世話になって五日目。
少しずつだが、身体もここの生活に慣れてきている。
「手伝うか?」
薪割りをしているレオリオの元へ、水汲みを終えたクラピカがやってきた。
「おお、丁度良かった。
割った薪を向こうに運んでくれねぇか?」
額に滲む汗を拭いながら、大量に積まれた薪の山を指差す。
「…しかし、キルアに会うだけなのによぉ。
何でオレたちゃこんなことしてんだ?」
「仕方あるまい。
この特訓のおかげで我々の体力が上がっているというのも事実だしな。」
彼らが寝泊まりさせてもらっているこの宿舎も、使用人が二人住むのには十分すぎる広さを持っている。
しかしゼブロ曰わく、執事室は更にこの何倍もあるらしい。
だとすると本邸はきっと、とてつもない大きさなのだろう…。
クラピカとレオリオは、敷地内にいながら未だ目にしたことのないキルアの家を想像しては、小さな溜め息を漏らすのだった。
「……あの、クラピカ?」
そんなことを考えていたところ、ふっと名前を呼ばれ我に返る。
振り向くとそこには、空になった洗濯カゴを抱えたジュリの姿があった。
「…どうかしたか?」
おろおろした視線を送る彼女に、クラピカは優しく笑いかける。
「…あの、ね。
わたし…
その、クラピカに…」
一歩、また一歩と静かに歩み寄るジュリ。
その瞳は、いつものように潤んで光を放っていた。