天空闘技場編
□#33 会いたい
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「……ふぅ。」
クラピカは小さな溜め息を一つ吐くと、目の前にあるコーヒーカップに手を伸ばした。
カチャッ─
冷たく無機質な音が耳に障り、ほんの少しだけ眉間に皺を寄せる。
アイリたちと別れ、本格的に雇い主を捜すと決めた彼だが…
まだ仕事先が見つかっていない。
できれば蜘蛛や同胞の目に近づけるような、そんな仕事に就きたいため、紹介所もそれなりの場所を見つけなければならないのだ。
『……どうしたものか。』
まだ慣れない地に気疲れしながら、何となく目に付いたカフェテリアに入り時間を潰していたが、
こうしていても始まらない。
とにかく今は、この近くに潜んでいるであろう紹介所を見つけよう。
そう思い立った彼は、残り少ないコーヒーを口に含むと、急いでその場を去ろうとした。
しかし…
─カランッカランッ─
たった今入ってきたお客が目に留まり、伝票を掴もうとした手を止める。
仲むつまじく、腕を組みながら歩くカップル。
恋人と過ごす、他愛のない時間を楽しんでいる様子。
どちらも本当に幸せそうな表情をしている。
そんな二人に気を取られてしまったのは、クラピカの中に彼らを「羨ましい」と思う気持ちがあるからだろう。
『…アイリ。
お前は今頃、どこで何をしているのだろうか。』
クラピカはそっと、右手で自分の唇に触れた。
あの日空港で、アイリに触れた温もりを思い出す。
ほんの一瞬の出来事だったけれど、永遠のようにも感じられた優しいキス。
アイリ…
愛している。
出来ることなら、今すぐお前に会いたい─…
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