天空闘技場編

□#36 完全な自由
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「…………。」

音を殺して歩く。

尾行している相手に気づかれぬように…。


キルアの視線の先にいるのは怪しい三人衆。
200階クラスの新人潰しといわれているギド、サダソ、そしてリールベルトだ。


彼らは試合の期日が迫っているらしく、何としてもゴンと五月中に闘いたいらしい。

しかし、ゴンがウイングに指定された試合日は6月10日。


五月に試合をするのは無理だと断った結果がこれだ。


この怪しい三人組は今、宿へと戻るズシを狙っている。

差し詰めズシを人質に、ゴンに試合の登録をさせるつもりなのだろう。



全てを見抜いていたキルアは、ゴンの部屋での修行を終え解散した後、こっそりとズシを追っていた。


『……路地で何か手を打つつもりだな。』


闘技場を出て暫くし、狭い道を曲がったズシ。

するとキルアの読み通り、サダソたちも素早くズシの後を追った。


『…あいつら、セコいことしやがって─…』

急いで止めに掛かろうと歩を早めたときである。


「待って、キルア。
一緒に行こう。」


後ろから聞こえた馴染みのある声に、キルアはバッと振り返る。

「……っ!!!?

アイリ、お前……」


そこにいたのは凛とした表情のアイリ。


「……何でここに?」

「あの三人がズシくんに手を出すだろうなぁって思って…
心配だからウイングさんとこまで送ろうと思ったの。

そしたら、先にキルアが尾行してたから。
便乗してあたしもツケてた!」


「キルアみたいに尾行が上手くないから、かなり遠くから追いかけてたんだけどね」と言いながら、いつものようにヘラヘラと笑うアイリ。

わざと自虐的な事を言っているが、彼女はいつも肝心なところを見逃さない。

キルアはそんなアイリのめざとさに、出会った当初から気づいていた。


「……前から思ってたけど、

お前のその、アホなくせに賢いところが…
何かムカつく。」

つまらなそうにボソッとそう呟くと、足元に転がっている石をコツンと蹴った。
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