天空闘技場編
□#36 完全な自由
1ページ/10ページ
「…………。」
音を殺して歩く。
尾行している相手に気づかれぬように…。
キルアの視線の先にいるのは怪しい三人衆。
200階クラスの新人潰しといわれているギド、サダソ、そしてリールベルトだ。
彼らは試合の期日が迫っているらしく、何としてもゴンと五月中に闘いたいらしい。
しかし、ゴンがウイングに指定された試合日は6月10日。
五月に試合をするのは無理だと断った結果がこれだ。
この怪しい三人組は今、宿へと戻るズシを狙っている。
差し詰めズシを人質に、ゴンに試合の登録をさせるつもりなのだろう。
全てを見抜いていたキルアは、ゴンの部屋での修行を終え解散した後、こっそりとズシを追っていた。
『……路地で何か手を打つつもりだな。』
闘技場を出て暫くし、狭い道を曲がったズシ。
するとキルアの読み通り、サダソたちも素早くズシの後を追った。
『…あいつら、セコいことしやがって─…』
急いで止めに掛かろうと歩を早めたときである。
「待って、キルア。
一緒に行こう。」
後ろから聞こえた馴染みのある声に、キルアはバッと振り返る。
「……っ!!!?
アイリ、お前……」
そこにいたのは凛とした表情のアイリ。
「……何でここに?」
「あの三人がズシくんに手を出すだろうなぁって思って…
心配だからウイングさんとこまで送ろうと思ったの。
そしたら、先にキルアが尾行してたから。
便乗してあたしもツケてた!」
「キルアみたいに尾行が上手くないから、かなり遠くから追いかけてたんだけどね」と言いながら、いつものようにヘラヘラと笑うアイリ。
わざと自虐的な事を言っているが、彼女はいつも肝心なところを見逃さない。
キルアはそんなアイリのめざとさに、出会った当初から気づいていた。
「……前から思ってたけど、
お前のその、アホなくせに賢いところが…
何かムカつく。」
つまらなそうにボソッとそう呟くと、足元に転がっている石をコツンと蹴った。