ハンター試験編
□#02 一緒に行こう
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銀髪の少年とすれ違ってから二時間が経とうとしている。
アイリは小腹を満たすため、近くのカフェに入ることにした。
『なんかお洒落な感じ♪何食べようかなぁ。』
ウキウキしながら店内に入る。
そこは全国でも有名なコーヒーショップで、テイクアウトも可能だ。
アイリは外を歩きながら食べられる手軽なお菓子をショーケースから選んだ。
それからキャラメルマキアート。甘いものは心を癒してくれる。
「いらっしゃいませ〜。」
アイリが注文した商品を待っていると、次に入ってきたお客に定員があいさつをした。
その声につられて、アイリも無意識に後ろを振り向く。
「…あっ。」
心の声が、思わず外に漏れてしまった。
そこにいたのは、先ほど街で殺気をビンビンに出していた銀髪の少年だったのだ。
「??」
自分の顔を見て声を上げた相手を、不思議そうに見つめる少年。
その眼差しは二時間前のものとはまるで別人だ。
大きな猫目はお店の照明を受けてキラキラ輝いている。
宝石のような、綺麗なブルー。
よく見るとハンサムな顔だ。
「…いや、その〜。」
言葉が続かずタジタジなアイリをよそに、少年はチョコレートにホイップがたっぷりかかったジュースを注文した。
二人並んで頼んだ商品を待つ。
「…さっき、何か嫌なことでもあったんですか。」
明らかに自分より年下だと分かっていたが、アイリは控えめに、敬語で彼に問いかけた。
「え…。さっきって?お前俺のこと知ってんの?」
ちょっと鼻にかかった声が年相応に幼くて、何故だかアイリは安心した。
「二時間くらい前かな…。
街であなたにすれ違ったんです。
あまりにも殺気立ってたから、嫌でも目がいっちゃって…。」
「…。」
少年は少し考え込んでいる様子だった。
「あ、ごめん。
余計なこと聞いた。
気を悪くしないで下さいね。」
アイリが慌てて弁解するのと同時に、二人のドリンクが手元に届く。
ナイスタイミングだと心でガッツポーズした。
「それじゃ、あたしはこれで。」
足早にお店を後にするアイリ。
『あ〜もう!
なんてこと聞いちゃったんだろう。
さっきまであんな殺気立ってた子だよ!?
地雷踏んであたしまで殺されたらどーすんのよ。』
心の中で自分を叱りながら早足で歩いていると、後ろから声がした。
「待ってよ。せっかくだしさ、ちょっと話さない?」
「…ん!?」
呼びとめられて振り返るとそこには銀髪の少年。
左手をポケットに突っ込み、右手でチョコのドリンクをおいしそうに飲んでいる。
こうして見ると、どこにでもいる普通の男の子だ。
「俺さ、家出して来ちゃったから暇なんだよね。
あんた意外とめざといみたいだし、興味湧いちった。」
ストローを咥えたままニィと笑う。
「めざといって…。」
「だってあんた、俺の殺気感じて一目置いてたわけだろ。
そっちも凡人じゃないみたいだね。」
「…まぁ、そう言われたらそうかもね。」
「とりあえず、俺明日までは時間あるからさ、ゆっくり話そうぜ。」
「…。」
キルアと名乗るその少年に、まだ少しの警戒心を抱きながらも、二人で小さな公園を目指して歩き出した。