ヨークシンシティ編
□#42 再会
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「二人とも。
もうすぐ飛行船が着陸するわ。」
話が一段落したタイミングで、同僚であるセンリツが姿を表した。
────ドクンッ、ドクンッ────
穏やかでないクラピカの心音が耳につく。
センリツの能力は相手の心音を読むこと。
音楽の才能と、どんな些細な音も聞き落とさない異常な聴力が産んだ念能力だ。
「さぁ、そろそろ集合しましょう。
あ、クラピカ。
少しいいかしら?」
「……あぁ、かまわないが。」
「競売までのペア行動についてなんだけど、少し考えがあるの。」
センリツはそう言うと、人差し指を立ててウインクしてみせる。
「じゃあ、私は先に行ってるね。」
「ええ。
ごめんなさいね。」
先程までの会話が全て耳に届いていたセンリツは、セナに申し訳なさそうに謝った。
「……で、考えとは一体なんだ?」
「ふふ。
そんなものないわ。」
セナの姿が見えなくなったのを確認すると、彼女は悪戯っぽく笑ってそう答えた。
「……もしかして、気を遣ってくれたのか?」
「まぁね。
余計なお世話だったらごめんなさい。
でも、あなたの心音がすごく乱れてたから。」
「…まったく、君には敵わないな。」
本心を見透かされ、クラピカは乾いた笑いを溢す。
不思議だが、センリツには自分の素直な感情を示すことができた。
このファミリーの中で、クラピカが唯一信頼できる人物なのである。
「ありがとう。
正直助かったよ。」
「どういたしまして。」
いつもは無愛想な顔を貫いている彼が、たまにこうして素の表情を見せるとき、センリツは心から安堵することができた。
「さぁ、私たちもみんなの所へ行きましょう。」
川のせせらぎのように落ち着いたクラピカの心音を聞きながら、センリツは穏やかな笑顔でそう言った。
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