ヨークシンシティ編

□#44 運命の定め
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「ここにいたのね。」

俯いていた彼の頭上から、ふいに愛しい人の声が聞こえる。

「隣、座っていい??」

「あぁ。」

力なく微笑む彼の右側に、ジュリはちょこんと腰を下ろした。

「アイリは??」

「泣きつかれて寝ちゃったみたい。」

「そっか。」

「うん……。」

フロントの時計は12時を跨ぎ、再会を誓った「約束の日」は過ぎていた。

「ジュリは寝ないの?」

「……うん。
なんだか寝付けなくて、キルアの部屋に行ったらゴンとレオリオしかいなくて。」

「…あぁ、わりぃ。
ちょっと自販機でジュースでも買おうかと思ってさ。」

「いいの。
無事会えたから。」

何か飲んでいた形跡は少しもなく、キルアらしくない分かりやすい嘘だなとジュリは思った。

それだけ、彼が動揺しているということも…


「キルア。」

「ん?」

名前を呼ばれ顔を上げる。
思った通り、彼の瞳は輝きを失っていた。

酷く寂しい瞳………


キルアが何に落ち込み、何を悩んでいるのか、今のジュリには手に取るように分かる。

だから今度こそ、失敗しない。

ハンター試験の時のように、キルアを失ったりしない。




ジュリはそっとキルアの右手を握った。

「キルアの手、温かい。」

「………。」

予想もしていなかった彼女の行動に、キルアはほんの少し体を跳ねさせた。

そして、握られた自分の右手を見つめる。



この手で一体どれだけの人を殺めただろう。

正直言って、人数など思い出せない。
殺した人間の顔や名前だって……

なんて汚い俺の手。

ジュリの純真な掌が、汚れたものに触れていると思うと悪寒がする。
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