ヨークシンシティ編

□#46 無垢
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ノストラード組が待機しているホテルに戻ると、クラピカはセナを自分の部屋に導いた。

血まみれの彼女をそのままセンリツたちの元へは行かせられない。

クラピカは洗面台にお湯を張ると、セナの右手を沈めた。

数時間前にウボォーが訪ねてきた部屋で、二人は彼の返り血を洗い流す。

「血、固まっちゃってるね。」

「………。」

「なかなか落ちそうにないなぁ。」

「私が洗うよ。」

お湯に入れたセナの右手の血を、優しく擦る。

しかし、乾いて赤黒くなったその血はなかなか剥がれ落ちてはくれなくて………

罪の意識に駆られながら、気付けばセナの手を力一杯擦っていた。

「……クラピカくん。
痛いよ。」

「……………っ。
すまない。」

「大丈夫。

クラピカくんも、顔が汚れてる。」

そう言って、セナの左手がクラピカの頬に優しく触れた。

「………っ。」

思わず体がゾクっと震える。

アイリ以外の人物に、こんな風に触れられるのは、正直不快だった。

「私は大丈夫だ。
自分でやれる。」

振り払うようにして顔を背け、視線をまた彼女の右手に戻す。


ウボォーの血は綺麗に消えた。
しかし………
この手が人を殺めた事実は消えない。


そう思うとまた、罪悪感が込み上げてくる。



そんなクラピカの心中を察したのか、セナが静かに口を開いた。


「私の手、そんなに汚ないかな?」

「…………。」

「………この手じゃ、クラピカくんに触れちゃだめ??」

「………違う。」

「じゃあ、触っていい??」

「いや……」

「やっぱり汚ない??」

「…………そういうことではない。」

相変わらず噛み合わない会話。
しかし、いつものように強く突き放すことはできなくて…
二人の間に恐ろしいほどの沈黙が流れる。


先にそれを破ったのは、やはりセナだった。
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