ヨークシンシティ編

□#46 無垢
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「お願い。
この手を拒絶しないで。」

「………っ。」

「私はね、あなたの為に汚したこの手を誇りに思ってる。」

そっと、
両手をクラピカの頬に添える。
顔を引き上げられ、視線がぶつかった。

セナの儚い瞳に見据えられたクラピカ。
今度はもう身動きひとつ取れない。

ただ、
頭の中では、ぼんやりと愛する人のことを考えていた。




アイリ………




私は、お前と出逢えて幸せだ。

たとえ結ばれない運命だとしても、
お前だけは絶対に諦めない。

もう随分と色んなものを諦めてきたんだ…。
せめてお前だけは…

アイリだけは手に入れたい。






だけど…………





今の私に、君に会う資格があるだろうか?



復讐のとどめも己でさせず、
関係ない者を巻き込んで、
汚させてしまった右手に怯えている。


私は酷く醜い。

私は自分が怨めしい。

私は“君”が愛してくれた“私”ではない。


罪を背負った私を

それでも君は「愛してくれる」だろうか??


いや、
むしろ「愛してくれる」と分かっているからこそ……

私はアイリの傍に居てはいけないのだ。


どこまでも真っ直ぐな君の優しさに、甘えてしまうから。
そうして君をも巻き込んでしまうのが、恐ろしいから。



アイリ……

どうかこんな臆病な私を恨んでくれ。
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