ヨークシンシティ編

□#52 生きる術
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「クラピカ、まだ目を覚まさない?」

買い出しから戻ってきたセンリツが、心配そうな顔で部屋に入ってきた。

人質交換を終えたクラピカは、アイリを抱きしめるとそのまま倒れ込むようにして意識を手放してしまった。

旅団との直接対決の直後ということもあり、人目のつかない廃墟で彼の看病をする一行。

こうしている間に、幻影旅団が動き出すのではいかという不安も拭えない。


団長には今後一切団員と接触しないことを約束させたが、果たしてクロロは何処へ向かうのだろうか。

パクノダは、クラピカとの約束を守り続けることができるのだろうか─……


「あぁ。
熱も高いままだし、こりゃ厄介だな…。」

レオリオはそう答えると、買ってきた氷や熱冷ましを受け取った。

センリツの笛の音も虚しく、彼はうなされ続けている。
きっと念の副作用か何かだ。

アイリとセナも付きっきりでクラピカの傍にいる。


「二人も少しは何か食べないと。
睡眠もほとんど取ってないでしょ?」

「大丈夫。
お腹もすかないし、眠くもないんだ。」

「私も。」

「でも……」

看病している二人まで倒れては本末転倒なのだが、センリツはその先の言葉を呑んだ。

アイリは両手でクラピカの右手を包んでいる。
その横で、セナは愛しそうに彼の寝顔を見つめる。

今の彼女たちの心はここに無いのだ。


『クラピカ……
早く目覚めてちょうだい。

こんなにもあなたを愛してくれている人がいるのよ。
心配かけちゃだめよ。』


センリツの胸中を察したレオリオは、彼女の肩にポンっと手を置く。

「まぁ、もう少し様子を見ようぜ。
こいつらもクラピカも、オレたちより断然タフだしよ。」

そう言って、にかっと歯を見せて笑う。
唯一人間らしい彼の温かさに、気付けばセンリツもどこかリラックスしていた。
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