ヨークシンシティ編
□#53 新たな旅の始まり
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「ありがとう。
二日間ずっと傍にいてくれたんだな?」
「当然だよ。」
泣きながら笑う彼女を今すぐにでも抱きしめたいのに、体が言うことを聞かない。
もどかしい気持ちと闘いながら、クラピカはゆっくりと上体を起こした。
「クラピカ!?
まだ寝てないとダメだよ!」
「…いや、大丈夫だ。」
アイリに支えられながらベッドに座り直していると、遠くからこちらを見ているセナと目があった。
「……セナ。
お前にも迷惑をかけたな。
いろいろとすまなかった。
それから、ありがとう。」
「クラピカくん─……」
最後の一言に、彼女はまたポロポロと涙を流す。
「……そんな、
感謝されるようなこと…私は、なにも……」
ずっとポーカーフェイスを貫いていたセナの涙に、クラピカは胸が詰まった。
泣き顔を隠すように覆われた手は、確かにあの日ウボォーの命を奪った。
それでも顔色一つ変えなかった彼女が、自分のために泣いてくれている。
こんなにも愛してくれている。
応えることのできない愛情を、冷たく跳ね返し続けていた自分がひどく幼稚に感じた。
クラピカの心情を察したアイリとレオリオは目を見合わせる。
様々な心音が飛び交う中、センリツは何はともあれみんなが無事に生きていることを実感するのだった。