ゾルディック家編
□#24 素直にならなきゃ
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「……。」
ジュリは何も言わず、ただ黙って試しの門を見つめた。
【…もしかして、キルアの家ってお金持ち?】
【いや、全然普通の家。】
いつだったか、彼とこんな会話をしたのを思い出す。
『嘘つき。
…全然普通なんかじゃないじゃない。』
ジュリは改めて、自分がどれだけ彼のことを理解していなかったのか思い知った。
あの時は、手を伸ばせは触れられる距離にいたキルア。
今となってはこんな冷たく無機質な塀に邪魔されて、会うことだってままならない。
ジュリは四次試験のあの日、彼の柔らかい髪に触れた感触を思い出し、右手をぎゅっと握りしめる。
「…ジュリ、
大丈夫?」
心底心配そうに見つめるゴンの表情を見て、彼女は初めて自分の頬を伝う暖かいものの存在に気づいた。
「…っ、うん。
大丈夫よ!」
涙を拭ったその手で、堅くて冷たい門に触れる。
こんなものなんかに、キルアとの距離を試されたくない。
「ゴン、わたし…
この門を自分で開けたい。」
「…えっ」
か弱い彼女の口から出た思いもしない発言に、ゴンは一瞬躊躇った。
しかし、すぐに彼女の決意を感じ取り、力強く頷く。
「…うん。
俺も、ここを開けてキルアに会いに行くよ。」
彼らのやり取りをずっと見ていたゼブロは、「この子たちなら、キルア坊ちゃんを救えるかもしれない。」と感じずにはいられなかった。
こんなことを思うのは、ゾルディック家の守衛として失格だ。
そう分かっているのに…
無意識に、口をついて出た言葉。
「私に付いて来て下さい。」
こうして、ゼブロとアイリたちの長い長い特訓の日々が始まる。