ゾルディック家編

□#25 誰よりも強い
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「誰かを真っ直ぐ愛すのには、大きな勇気が必要だ。


ジュリ。
キルアを想うお前の気持ちは、誰よりも強い。」

「…っ!!」


ジュリは顔を真っ赤にして動揺を見せたが、それでもクラピカと合わせた視線だけは逸らさなかった。

「…そんなお前のことを、
私は弱いなどとは思わないよ。」

そう言って、彼は自嘲気味に笑った。


「…クラピカ、

ありがとう。」

ジュリは頬を紅潮させながらも、晴れ晴れとした顔で笑い返した。

キルアにはっきりと恋をした彼女には、自分を取り巻く世界が全て、今までと違って見える。

ずっと引っ掛かっていたクラピカとの蟠りさえも、キルアを想う気持ちを認めれば

ほら…


こんなに簡単に元通り。


「…クラピカのおかげで、わたし益々勇気が出たわ。

キルアに会ったら、彼に聞きたいことをちゃんと聞く!

それからっ、
自分の気持ちも…

伝えたい。」

「あぁ、きっと伝えられるさ。

応援している。」

クラピカは彼女たちの明るい未来に期待を膨らませ、いつものように優しく笑う。


そして同時に思ったこと。




ジュリは強い。

キルアが殺し屋だと分かっても、
住む世界が違うと知っても、

それでも彼を愛している。



それに引き替え私は…

真っ直ぐな愛を向けてくれる人の気持ちさえも、素直に受け止められない。


アイリ、

すまない。



きっと、一番弱いのは私なのだ。





「…おい、クラピカ。

ぼーっとして、どうかしたか?」

考えこむ彼の顔を見て、思わずレオリオが声をかけた。


「…あぁ。
いや、何でもないのだよ。


ジュリ、お前もこの薪を運ぶの手伝ってくれないか?

もっと鍛えて、早くキルアに会いに行こう。」

気持ちを切り替えるように、明るくそう言い放つクラピカ。

「うんっ!!」

ジュリは抱えていた洗濯カゴをその場に置くと、弾むような足取りで山積みになった薪に手を掛けた。
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