ゾルディック家編
□#26 難解すぎるのだよ
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パシャッ─
宿舎前の草木に水を撒いていたゼブロの元へ、ドタドタと賑やかな足音が聞こえてきた。
「ゼブロさーんっ!」
最初にたどり着いたのはゴン。
ニコニコ手を振りながらこちらを見ている。
「やぁ、ゴンくん。
試しの門はどうでした?」
「うんっ!
あのね、俺たち男はみんな開けれたよっ。
レオリオなんて、2の扉まで開けちゃって!!」
アイリたちと競ってここまで来たはずなのに、少しも疲れた様子を見せない彼は、興奮気味にそう話す。
「それは素晴らしい。
ジュリちゃんたちはどうだったのかな?」
たった今、二着でゴールした彼女に、ゼブロはいつもの笑顔で問いかける。
「前回よりは手応えあったんだけど…
開ききる前に力尽きてしまうの。」
シュンと肩を落とすジュリ。
しかしゼブロは「うんうん」と満足そうに頷いた。
「十分ですよ。
きっとあと数日で、君たちもクリアできます。」
「…えぇ、ありがとう。」
ジュリが前向きな気持ちになったとき、丁度三着目のアイリが宿舎前に到着した。
「…あぁ!!!
もう、二人とも速すぎっ
あたしも割りと自信あったのにー!」
ゼーゼー息を切らしているところを見ると、彼女は本気を出して走ったのだろう。
それでも三着ということは…
全くゴンもジュリも、尋常じゃない速さだということは確かだ。
「なんだー、やっぱビリはアイリかぁ?」
小走りで後を追っていたレオリオとクラピカも宿舎に戻り、これでようやく全員揃った。
「レオリオくんもクラピカくんも、試しの門突破おめでとうございます。」
ゼブロにそう言われ、クラピカは軽く微笑みながら会釈を返した。
「おうよっ!
俺は2の扉まで開けてやったぜっ」
よっぽど嬉しかったのか、レオリオは右腕を曲げてご自慢の力こぶを主張してみせる。
そんな彼を見て、ゼブロはいつも通りのにこやかな表情でこう言った。
「いや、お見事です。
そういえば、あの日試験から帰って来たキルア坊ちゃんは3の扉まで開けて入っていたなぁ。」
「「「「「えーっ!!?」」」」」
一同は声を揃えて叫んだ。
さらりと爆弾を落とされた気分だ。
試しの門は両開きになっており、片方だけで2トンもある。
扉は1から7まであるのだが、数が増えるごとにその重さは倍になっていくのだ。
「…ってことは、キルアが開けた重さは─」
そう呟きながら、頭の中に計算式を浮かべるアイリ。
片側だけでも2トンの三乗で、8トン。
それが両開きともなれば…
「……12トン─」
「16トンだよ、ゴン…。」
真剣な面持ちで答えるゴンに、クラピカは丁寧に突っ込みを入れた。
どうやら彼は計算が苦手のようだ。
「まぁ、キルア坊ちゃんは昔からこの屋敷で鍛えられていますからね。
そう考えれば、やはりあなたたちの成長ぶりは凄まじい。
期待以上ですよ。」
尚もニコニコ笑顔のゼブロに若干の恐怖を感じなからも、五人は彼の言葉を信じ今日も一日特訓を続ける。