ゾルディック家編
□#27 ちゃんと心がある
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─ゾルディック家 本邸─
「イルミ!!
イルミはどこなのっ!!?
誰か今すぐここにイルミを連れてきてちょうだいっ」
殺風景な屋敷の大広間に、キルアの母親であるキキョウの声が響き渡る。
豪華なドレスを身にまとっている彼女の顔はほとんど分からない。
なぜならその顔は包帯で覆われており、機械式のゴーグルにより目も見えないからだ。
彼女はヒステリックな性格のため、毎日キンキンと高い声を屋敷中に響かせている。
しかし、今日はいつもに増して凄まじいヒステリーぶりだ。
…それもそのはず。
キキョウは今朝の出来事を思い出していた。
――――――
「キル〜!!?
入るわよぉぉ?」
試験から戻って以来、自室に閉じこもっているキルアの元へやって来たキキョウ。
中から返事はなかったが、自分の息子の顔を見るためにゆっくりと扉を開けた。
「まぁまぁ…
眠っていたのねぇ。」
ベッドの上でスヤスヤと眠るキルアを確認すると、キキョウはそっと隣に腰を下ろした。
「…キル。
あなたはこのゾルディック家の後継者となる人間なの。
家を出るなんて馬鹿げたことを考えるのは、これっきりにしてちょうだい。」
「…んん。」
耳元で囁かれる声に少し反応し、寝返りを打つキルア。
まだ幼い我が子の姿を、キキョウは愛おしそうに見つめる。
「あなたはゾルディック家史上随一の暗殺者よ。」
そう言って、祖父や父親と同じ銀色の髪を優しく撫でようとした。
…その時である。
「……。
ジュリ…」
「…っ!!?」
キルアの口から出た、聞き覚えのない名前。
“ジュリ”とは一体…誰なのか。
キキョウはショックのあまり「ヒィィィ!」と喉を鳴らすと、キルアが目覚めたらすぐに独房へ入れるようミルキに伝えた。
ミルキとは、イルミの弟でキルアの兄にあたるこの家の次男坊だ。
そうして自分自身は、イルミを探すため屋敷中を走り回る。
『“ジュリ”とかいう子は、ハンター試験で出会った子に違いないわっ!!
だったら、一緒に試験を受けていたイルミが何か知っているはずよーっ』
和服を着たおかっぱ頭の末っ子カルトを連れて、キキョウはヒステリックな声を出しながら走る。
――――――
「やぁ、母さん。
俺を探してるんだって?」