ゾルディック家編
□#31 恋人になりたい
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ガタンッゴトンッ─
夜行列車に揺られながら、静かに眠りに落ちていたゴンは、ふっと目を覚ました。
「…。」
時計を確認すると、時刻はまだ深夜二時過ぎ。
ゴンはそっと寝返りを打ちながら、隣に並んでいるヘッドに目をやる。
そこに見えるのは、スヤスヤと寝息をたてるアイリ、クラピカそしてレオリオ。
ジュリとキルアの姿はなかった。
誰も入っていないのに膨らんだままの布団を見て、ゴンはボーッと考える。
キルアとジュリは今頃きっと、この列車のどこかで肩を並べて座っているのだろう。
離れていた時間を埋めるように、
想いが通じた喜びを分かち合うように、
二人で仲良くお喋りしてるのだ。
そう思うとまた、無性に喉が渇いてくる。
ゴンはのっそり起き上がると、部屋に備え付けてあるキッチンの蛇口を捻った。
コポコポと流れてくる水をコップで受け止め、それを一気に飲み干す。
「…ふぅーっ!」
喉につっかえている得体の知れない“何か”を無理矢理に流し込み、大きく深呼吸をした。
「……ゴン?」
もう一杯注ごうと蛇口に手を掛けたときだ。
後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには眠い目を擦りながら立っているアイリの姿があった。
「あ!
ごめんっ、起こしちゃった?」
「ううん。
それより、大丈夫?」
「うん?
ちょっと喉渇いちゃって…
これ飲んだらすぐ寝るよ!」
いつものようにニコニコ笑って答えるゴンに、アイリは眉を思いっきり下げて問いかけた。
「……そうじゃなくて。
キルアとジュリちゃんのこと。」
「…え。」
驚きのあまり、握っていたコップを落としそうになる。
彼女は今何と…?
キルアとジュリのこととは、つまり……
「…ごめん、ゴン。
あたし本当はゴンの気持ちに気付いてた。」
寝起きでボーッとする頭を何とか働かせようとしているゴンに、アイリは続ける。
「気付いてたけど、何もできなかったの。
…キルアやジュリちゃんの気持ちも、知ってたから。」
そこまで言われてようやく現状を把握した彼は、嬉しいような困ったような…
そんな表情でアイリに笑いかけた。