天空闘技場編
□#32 心配すんな
2ページ/8ページ
「…キルア、怒ってるの?」
「……別に。」
ジュリは隣に座る膨れっ面な彼氏の顔を覗き込む。
数日前の感動の再会はどこへやら…。
ただ好きな人と一緒にいられるだけで満足だと思っていたのに、想いが通じると今度はまた別のトラブルが発生する。
全く“恋心”というのは、どうしてこうも事をややこしくしてしまうのだろう。
「1973番!2055番!
Eのリンクへどうぞ。」
ぎくしゃくした空気の中、目の前のリンクで行われている試合を黙々と見ていると、ゴンの番号が呼ばれた。
「…俺だっ!」
「まじで!?
ゴン、頑張ってねっ」
「うん!
行ってくるよっ」
元気よく手を振り、客席から出ようとするゴン。
そんな彼を見つめていたキルアは、一つため息を吐くとゴンを呼び止めた。
「ゴン!
お前、試しの門クリアしたんだろ?
ならさ、もうただ思いっきり……」
ようやく機嫌を戻したのか、ゴンを手招きすると、彼の耳元で何かを囁く。
「え!?
本当に?」
キルアに何らかのアドバイスを貰ったゴンは、少し半信半疑のような顔をしていたが、それでも意を決してリンクへと向かった。
「…ねぇ、ゴンに何を言ったの?」
きょとんとした顔で問いかけてくるジュリに、キルアは得意げな顔で答える。
「まぁ、見てなって。」
レフリーの合図と共に、ゴンの相手である巨漢が動き始めた。
「ゴーンっ!!
頑張れぇ!」
周りの目も憚ることなく、アイリは大声で仲間を応援する。
その次の瞬間─…
─ドーンッッ!!─
会場中に広がるざわめき。
それもそのはず。
ゴンは押し出し一本で、巨漢を壁にぶち込んだのだ。
「…2055番。
キミは50階へ」
「ありがとう!」
呆気に取られるレフリーに対し、爽やかにお礼を言うゴン。
そのまま軽い足取りでアイリたちの元へと帰って行った。