天空闘技場編
□#34 死ぬんじゃねーぞ
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200階フロアの長い廊下を、キルアとジュリは小さな足音を鳴らして歩く。
アイリを部屋まで送り届けた二人。
「夜中だし、心配だから送る。」と言ったキルアの言葉に甘え、ジュリも自分の個室まで見送ってもらうことにしたのだ。
しかし…
彼女たちを包む恐ろしいほどの静寂。
アイリと別れてから、まだどちらも口を開いていない。
それもそのはず。
ヒソカとの再会と“念”の真相とですっかり忘れていたが…
キルアはジュリの昼間の試合の件で、かなりご立腹の状態だったのだ。
『もしかすると、本当はまだ怒っているのかも…。』
そう思ったジュリは、気まずそうに隣にいるキルアの様子を窺う。
その拍子に、自分の右手が彼の左手に「トン」とぶつかった。
「…あ、ごめんなさいっ」
ジュリは慌てて視線を逸らすと、アタフタしながら小さく叫ぶ。
ほんの少し、指先が触れただけなのに…
ジュリの頬はみるみる紅く染まる。
直ぐにでも手を繋げるくらい近くにいるのに、
その勇気が出せない自分がもどかしい。
「……あのさ。」
ジュリが自分の心と葛藤していると、黙って隣を
歩いていたキルアがとうとう口を開いた。
思わず緊張が走ったジュリは、勢いよく視線を上げる──…
そこにいたのは、
先ほど触れた指のせいで、耳まで真っ赤にしたキルアだった。
「…さっきは悪かった。」
「……え。」
突然の謝罪と、キルアの顔が真っ赤な理由が分からず、小首を傾げるジュリ。
そんな彼女の姿を見て、キルアは一つ溜め息を吐くと恥ずかしそうに続けた。