天空闘技場編
□#36 完全な自由
2ページ/10ページ
「はっ!!?
このタイミングでまさかの悪口!?」
アイリは予期せぬ展開に思わず大声を出す。
しかし、すぐに尾行していたことを思い出し、「あっ!」と後悔したように両手で口を抑えた。
「……危ない、危ない。
静かにしないとバレるじゃん!」
「……一人でボケたり突っ込んだり、
何遊んでんだよ。」
「いやいや!
キルアが急に失礼なこと言うから─…」
「あー、はいはい。
俺が悪かった!
いいから早く行こうぜ?
ズシが危ねーだろ。」
「はっ、そうだよ!
早く早く!」
一瞬、何をしにここへ来たのかも忘れてしまっていたアイリ。
本来の目的を思い出すと、慌ててキルアの背中を追いかける。
こういうところなのだ。
しっかりしていると思えば、どこか抜けていて…
でも、本当はもの凄く冷静で、視野が広い。
事実、キルアでさえ気付いていないゴンのジュリに対する恋心も、アイリだけは気付いている。
このギャップが、キルアにとっては何とも悔しい気持ちになるのだ。
しかし、そんなアイリのことを、本当は心のどこかで尊敬していたりもする。
そんなこと、もちろん彼女には秘密なのだけれど。
結局、5月29日にキルアがサダソと試合をし、彼に勝ちを譲ることでズシは解放された。
一緒にいたアイリも、その二日後には負け試合をすることになっている。
その代わり、わざと負けてあげるのは今回だけ。
ゴンやジュリを脅すのも無し。
それが、キルアの出した条件だった。