番外編
□ある夜の出来事
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試しの門の特訓を始めてから、10日目の夜。
宿舎二階にある男群の寝室では、こんな会話が繰り広げられていた。
「そういやよぉ…
ジュリはあんま変わんねぇけど、最近アイリはだいぶ筋肉ついてきたな。」
一日の汗を流し、さっぱりした髪をタオルでゴシゴシ拭きながら、レオリオがおもむろにそんなことを口にした。
「……え、そうかな?
あんま気にならなかったけど…。」
片手で逆立ちしながら筋トレをしていたゴンは、ひょいっと大勢を戻して答える。
「いや、アイリだって鍛えてる割りには細い方だと思うぜ?
でもよ、今日アイツと一緒にスクワットしてたんだが…
そん時のふくらはぎの立派なこと!!
そりゃあ、もう─…」
─バコッ─
「……あっ」
レオリオの顔面に分厚い本が直撃したのを見て、思わず声が洩れるゴン。
飛んできた先を見ると、既にベッドで読書をしていたはずのクラピカが、思い切り眉間に皺を寄せていた。
「……いってぇ!!
やい、クラピカ!!!
いきなり何しやがるっ!?」
「……貴様という奴はっ!
トレーニング中に一体アイリのどこを見ているんだっ!!」
「スクワットだぞっ!!?
ちゃんと脚に効いてるかどうか確認するのに、ふくらはぎ見て何が悪いってんだっ!!」
「お前のことだっ!
それを口実に邪な気持ちもあったに違いない!!」
「はぁぁぁぁ!!?
テメェ、言い掛かりも大概にしろよっ!!
確かにアイリの方がジュリより胸はあるが、オレは別にアイツをそんな対象として見たことは一度もねぇーっっっ」
「……貴様っ!!」
いつもの冷静なクラピカからは想像もできないくらい荒ぶる姿を見て、レオリオは「ひぃぃ!」と喉を鳴らした。