番外編

□sweet kiss
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「ジュリちゃん、それチョコチップ多いかも…」

「そうなの。
キルアは甘いの好きだから、多目に入れようと思って。」

そう言って微笑む彼女の頬には小麦粉なのかベーキングパウダーなのか、白い粉が付いている。

「うーん……
気持ちは分かるけど、あんまり入れすぎるとチョコの重さで生地が膨らまないよ??」

アイリは布巾でジュリの顔を拭きながら、溢れんばかりにチョコチップが盛られたカップケーキに目をやった。

「えぇ!?そうなの??
どうしよう……」

「んーとね……

あ、じゃあこうしよう!
出来上がったカップケーキに溶かしたチョコをコーティングしようよ。
それから、ココアパウダー混ぜたやつとか、マーブルとか、色々アレンジしてみればチョコもいっぱいだし見た目も華やかになるよ。」

「なるほど…!
すごいわ、アイリっ」

「えへへ。
あたしも手伝うからキルアのために頑張ろうっ!」

「ええ。
ありがとうっ!!」

そうして再び、不器用な手付きで生地を混ぜるお嬢様。
無類の甘い物好きである恋人のために、頑張る姿が愛らしい。


一方、アイリは着々とお菓子を作り上げていた。
ブルーベリージャムが乗ったレアチーズケーキ。
それから、ビターチョコを使ったムース。
ボンボンショコラも作ってみようかな、なんて考えながら溶かしたチョコをテンパリングしている。

「アイリは本当に料理もお菓子作りも上手ね。
わたしとは大違い!」

「ディーノやラキと旅してるときは、あたしが料理作ってたからね。

ジュリちゃんはお嬢様なんだから、経験がなくても仕方ないよ。
それでもキルアのために一生懸命作ることに価値がある!」

「ありがとう。

クラピカも、アイリの美味しいお菓子を楽しみにしてると思うわ。」

「そうかなぁ。
だといいな。」

“クラピカ”という名前を聞くだけで、自然と頬が緩む。
普段甘いものをたくさん食べているイメージはないが、こんな日には彼も心を踊らせてくれていれば嬉しい…。



そう、明日は2月14日。
恋人たちのバレンタインデー。
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