Raison d'etre

□帝丹高校での任務
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side heroine.


翌日。
お昼休みまで、残りの授業も一つ。
そろそろ、計画を実行する時間だ。

「…朱音ちゃん、」

蘭ちゃんが、心配そうな顔でそう声をかけてくる。

『何?』
「その…朝から思ってたんだけど、少し顔色悪くない?」
『…そうかな?』
「うん…」
「…確かに、ちょっと悪そうね」

蘭ちゃんに続いて園子ちゃんにも指摘された私は、次の時間、保健室で休むことになった。
…もちろん、これは全て演技である。
生徒であることを利用するには、授業中に実行するのが一番。
そうなると、その間のアリバイを作らなければならない。

「熱はないみたいだけど、ちょっと顔色が悪いわね…。少し眠りなさい」
『…はい』

保健室へ行き、そのままベッドへ潜り込む。
後は時間が来るのを待つだけだった。


授業終了まで、残り15分。
外で待っている彼女との約束の時間だ。
ベッドの周りにカーテンが引かれているのを確認して、音を立てないように窓から外へ。

『…さて、仕事の時間ね』

短めの金髪ウイッグ、緑のカラーコンタクト、そして制服から黒の上下へ着替える。
これで、万が一姿を見られても私だとは気づかれない。

あらかじめ、ターゲットを呼び出しておいた校舎裏へ向かえば、そこには既に取引相手が待っていた。

「き、君が私をここへ呼んだのか?」
『…あぁ、僕さ。この声には聞き覚えがあるだろう?』
「た、確かに…昨日の電話と同じ声だが…」

昨日の夜、この男──帝丹高校の教頭に電話をしておいた。
この時間と場所を指定するために。

「お前達の要求は何だ!?」
『…別にたいしたことじゃない』

言いながら、右の人差し指を教頭の胸に当てる。

『お前が組織に報告していない金のありかを教えてくれればいい…それだけさ』
「!…何のことだかわからんな」
『…それは残念だ』

右手を教頭の体から離した瞬間、

───ドンッ…

そのこめかみに、銃弾が命中する。
遠くのビルからこちらを狙っていたキャンティの弾により、彼はその場に倒れ込む。
二度と再び、起き上がることはないだろう。


息がないことを確認し、私は保健室に戻ってきた。
変装を解き、はじめと同じようにベッドに横になる。

『…先生、』
「…はい、どうかしましたか?」

カーテンを開け顔を覗かせた保健医に手を伸ばし、そのまま彼女の手首を掴む。
次の瞬間、彼女は笑いながら話しかけてきた。

「あら、目が覚めたのね。気分はどうかしら?大分顔色も良くなったみたいだけど…」
『大丈夫です』
「そう。なら、もう戻っても良いわ」
『はい、』

時計を見れば、既にお昼休みが始まっている。
発見も時間の問題だろうと立ち上がると、廊下からバタバタと足音が聞こえた。
走ってきた勢いそのままに、蘭ちゃんと園子ちゃんが入ってくる。

「大変よ!大変!」
『…?何かあったの?』
「教頭先生が校舎裏で亡くなってたの!」
「まぁ!なんてこと…」

予想以上に早い発見だが、早い分には好都合。
しっかりとした犯行時刻がわかれば、それだけアリバイが生きてくるんだから。

驚くふりをしつつそんなことを考えている内に、校内放送が事件の発生を告げる。
こちらへ向かうパトカーや救急車のサイレンが、徐々に大きく聞こえ出した。





to be continued... (back)

 

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