Raison d'etre

□データの在処
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side heroine.


『…西多摩市のツインタワービル?』
〈うん〉

今回の事件の始まりは、蘭ちゃんからのこの電話。
ツインタワービルと言えば、近々完成すると言われている二つの高層ビルだ。

〈オープンはまだ先何だけど、お父さんが招待されてるみたいなの。朱音ちゃんも一緒にどうかな?〉
『私が行ってもいいの?』
〈もちろん。園子も行くし〉
『じゃあ行こうかな…。いつ?』
〈明日よ〉

明日は特に、何も予定は入っていない。
急な任務が入らなければ、問題はないはずだ。

『うん、大丈夫』
〈じゃあ事務所の前に来てね〉
『わかった』

さて、明日の用意でも。
そう思った時、再び携帯が着信を知らせた。
ディスプレイに表示されているのは「ジン」の文字。

『もしもし?』
〈俺だ。明日、少し付き合え〉
『明日?』
〈何かあるのか〉
『うん…』

ついさっき、明日の予定を入れたところだ。
もう少し早く電話してくれれば良かったのに、なんて考えてしまう。

『ほら、西多摩市にできるツインタワービル。明日、クラスメイトとそこに行く予定なの』
〈西多摩市の、ツインタワービル…?オープンはまだ先だが…いや、丁度良い〉
『…ジン?』
〈ブルームーン、〉

ブルームーンという呼び名に、これは仕事の話であるのだと気持ちを切り替える。

〈今、組織は"原"という男を裏切り者として追っている。奴は自らが務めるTOKIWAのコンピュータに、組織の情報を転送した可能性がある〉
『TOKIWA…確かその会社の社長、ツインタワービルのオーナーよね?』

ジンからの誘いを断らなければならないかもと考えた、数秒前の自分はもういない。
明日、蘭ちゃんたちと行くことで、ジンの任務に協力できるんだから。
そうとなれば、私がやることは一つ。

『…TOKIWAのコンピュータのある場所、探ってくれば良い?』
〈あぁ。まさか奴も、オープン前のビルに組織の人間が入ってるとは思わねぇだろうさ〉
『ふふっ』
〈どうした〉
『別に。信頼してくれてるんだって思って』
〈当然だ〉

間髪入れずに返ってくる肯定に、自分の頬が緩むのを感じる。

〈…しくじるなよ〉
『うん。任せて』

蘭ちゃんから誘われたときはただの興味だったけれど、目的は変わった。
今この瞬間から、明日の予定は任務のための下調べになる。
裏切り者には、死あるのみ。
毛利小五郎を招待したこと、それが命取りになったわね。





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