Raison d'etre

□シェリーからの電話
1ページ/2ページ


side heroine.


ツインタワービルのオープンパーティー2日前、私はジンの車に乗っていた。

『どこへ行くの?』
「前に俺が始末した女が、組織の目を盗んで部屋を借りていたらしい」
『女?』

たとえもう死んだ人間でも、ジンがほかの女のことを気にかけるのは気に入らない。
始末した人間のことを、覚えていて、調べているなんて。

「宮野明美だ」

宮野明美…。
名前まで覚えているなんて、どんな女なんだろう。
でも、名前で呼ぶってことは、

『…コードネームはないのね』
「あぁ。…言っておくが、奴自体はどうでも良い」
『ふーん、』
「…奴の妹が、例の薬の開発をしていた。シェリー、お前も知ってるはずだ」

シェリー。
組織の科学者で、組織を裏切った女だ。
その女の姉が借りていた部屋。

なんだ、私の早とちりか。
ジンが彼女の身辺を調べたのは、裏切り者を見つけるため。

『…シェリーの手がかり、あるかもしれないわね』
「そういうことだ」
『そう言えば、私、ツインタワービルのオープンパーティーに招待されたんだけど、』
「明後日か」
『うん。でも、行かないつもり』

だってあそこは、明後日、崩れるんだものね。
私たちの手によって。


「ここだ。降りるぞ」
『うん』

ジンはとあるマンションの前に車を止めた。
いくつかの部屋に明かりがついていて、そのどれかに、先に行っているはずのウォッカがいるんだろう。
ジンは迷うことなく進み、やがて一つの部屋へ入っていった。

「兄貴。と、ブルームーンさん」
「この部屋か」
「管理人に写真を見せて確認しやした」
「フン。奴が組織の目を盗んで、こんなヤサを根城にしていたとはな」
「家賃が一年分前払いされてて、電話も留守電のまま。隣の住人の話じゃ、時々電話がかかってきて、メッセージを入れてるようなんですが…留守電を確かめたところ、妙なことに…」
「メッセージは録音されていなかった」
「え?えぇ…一体、誰がどういうつもりで…」
『普通に考えれば、そのメッセージを聞かれたくないために削除したってところね』
「あぁ。…車の中にパソコンがある。取ってこい」

ジンが一枚のCDを取り出す。

「組織が開発した逆探知プログラムだ。こいつを使えば、20秒で逆探知できる」
「了解」

さて、どんな獲物がかかるかしら。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ