Raison d'etre

□紫の瞳の転校生
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side conan.


『…蘭ちゃんの弟さん?』

探偵団の奴らと下校中、前に蘭と園子がいるのに気付いた。
一緒に、見たことのない黒髪の少女。
帝丹高校の制服を着ているから、同じ学校の生徒ではあるのだろう。

「ううん、家で預かってる江戸川コナン君。それから、コナン君の友達の吉田歩美ちゃん、灰原哀ちゃん、円谷光彦君、小嶋元太君」
『水島朱音、よろしくね』

水島朱音と名乗った彼女は、蘭と園子のクラスの転校生らしい。
その時、携帯の着信音がした。

『ごめん、ちょっと…』

鳴ったのは彼女のものらしい。
この場で出るかと思ったが、相手を確認しただけですぐに切ってしまった。
通話相手が意外な人物だったのか、少し驚いたような表情をした気がした。

「出なくていいの?」
『うん。でもごめん、私急いで帰らないと…』
「いいって、いいって」
「また明日ね」
『うん』

蘭と園子に断り、俺たちにもすまなそうな笑顔を向けると、彼女は音もなく去って行った。
水島さんが離れてすぐ、灰原が俺へ耳打ちする。

「…彼女、何者?」
「高校生じゃないのか?」

蘭と園子と話す彼女は、どこにでもいる女子高生に見えた。
先程の表情が少し気になりはしたが、そこまで気にかけるものではないだろう。

「…彼女、足音がしなかった」
「足音?」
「えぇ。歩く時ならまだしも、走る時まで足音がしないなんて…普通じゃないわ」
「なら、何だってんだよ?」

足音くらい、少し気を付ければ俺だって決して歩けるだろう。
そう思って灰原に返したが、その表情は真剣そのもの。
言うのをためらっているようで、何かを思いつめているようで。

「…一人いたのよ。情報収集を担当し、どんな場所だろうと物音一つ立てず、対象の背後を取れるよう訓練を受けた人が」
「まさか、彼女がそうだってのか!?」

そうだとしたら、こんな所に何の用だ。
俺と灰原の正体が組織にばれて、彼女が派遣されたとでもいうのか。

「…わからないわ、実際に会ったことはないから。噂では、とても優秀な少年だそうよ。組織内でもガードが堅くて…情報はそのくらい」
「そいつの、コードネームは…?」
「…ブルームーン」





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