Raison d'etre

□シェリーからの電話
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ジンとウォッカと共に、電話がかかってくるのを待ってしばらく。
部屋にあった電話が、着信を告げた。

───はい、宮野です

すぐさまプログラムが逆探知を開始する。
通話相手の番号が一桁ずつ解析され、表示されていく。

───ただいま留守にしております。発信音の後で、お名前とご用件をどうぞ

宮野明美の留守電の声の後。
電話の向こうから聞こえてきたのは、若い女の声だった。

〈…お姉ちゃん、私。明後日、ツインタワービルのオープンパーティーに行ってくるわ〉

宮野明美のことをお姉ちゃんを呼ぶ女は、彼女の妹、シェリーしかいない。
シェリーの居場所が特定できるかと思われたその時、10桁ある内の7桁目まで解析したところで電話が切れ、逆探知は失敗に終わった。
すぐに再びかかってきた電話によって、メッセージが削除される。

「メッセージを消しやがった。まさか、あの女、俺たちのこと感づいて、」
「いや、それはない。メッセージを消したってことは、後でそれを聞かれなくないため。まさか俺たちが、電話のそばで聞き耳をたてていたとは、夢にも思っちゃいねぇよ」
「またかけてきやすかねぇ?」
「もう二度とかけてこねぇだろう。…だが、どうやら天は俺たちに加勢してくれてるようだ」
『ツインタワービルのオープンパーティー、ねぇ…』

丁度明後日、そのパーティーに招待されている。
元々断るつもりでいたけれど、シェリーが来るとなれば話は別だ。

手がかりがつかめるかと思っていただけだったが、これは思わぬ収穫になった。
手がかりどころか、本人に直接会えるかもしれないのだから。

「ブルームーン、」
『ん、参加するわ』
「パーティーに行くんですかい?」
『えぇ。招待されてるの』
「…それらしい奴を見つけたら、殺れ。俺も近くのビルで張る」
『了解』


翌日。
ジンから、青いワンピースと黒のジャケットが届いた。
ついでにいくつかの小道具も。
当日までに、ジンと打ち合わせをしておかなくちゃね。





to be continued... (back)

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