Raison d'etre

□彼方と此方
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どうやってコナン君を助けたのか。
どちらにしても、ここでそれを正直に答えることはできない。

『…実は、私もよく覚えてないの』
「え?」

蘭ちゃんがきょとんとした顔で首を傾げる。

『蘭ちゃんの声を聞いて、コナン君が危ないって思ったら、もう必死で。ごめんね』
「そんな、謝らないで。朱音ちゃんが悪いんじゃないし、むしろ感謝してるんだから」
『…うん』
「…コナン君は?覚えてないの?」

今度は園子ちゃんがコナン君に聞いた。

「えーと、腕を引っ張られたような気がするけど…、よく覚えてないや」

コナン君はそう言って苦笑した。

ワイヤーを見られなかったのか、本当に覚えていないのか、私にはわからない。
だからこそ、コナン君を抱いて走った。
その記憶から、ワイヤーの存在を消すために。

『腕、大丈夫?強く引きすぎなかった?』
「うん」
『良かった』

今のコナン君には、私に腕を引かれたところからしか残っていない。
触れていないため記憶を操作できなかった蘭ちゃんと園子ちゃんに関しても、これでたぶん大丈夫だろう。
そもそも、彼からは普通の女子高生と小学生。
私たちが生きている世界なんて、知る由もない一般人なのだから。


その後。
この事件は、犯人である如月さん、そして再びA棟へ戻ったコナン君と少年探偵団が、車でB棟へ移るという衝撃的な展開で終幕を迎えることとなる。

『…結局、彼女はいなかったの?』
「あぁ。だが、まぁいいさ。当初の目的は達した。原は始末したし、TOKIWAのメインコンピュータは爆破した。もう、組織の情報が外に漏れることはねぇ」
『そうね』

裏切り者は始末した。
後からこっそり聞いた話で、原の元にも割られたお猪口が置いてあったそうだ。
私たちが去った後、如月さんが置いたものだろう。
組織の関わりは公にならず、この事件は終息した。

「ご苦労だったな、ブルームーン。…いや、朱音」
『ジン?』

突然呼び方を変えたジンを仰ぎ見れば、その唇が降ってきた。
ひと仕事終わったし、これはご褒美と思って良いんだよね。
この瞬間、また次も頑張りたいって思えるの。





to be continued... (back)

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