Raison d'etre

□彼方と此方
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side heroine.


「皆さん、ここを渡れば隣のビルですよ!」

沢口さんが連絡橋の手前で叫ぶ。
女性たちが次々と渡っていき、私もそれに続いた。

橋を半分ほど渡ったところで、頭上から爆発音がした。
ジンとウォッカが、60階の連絡橋を落としたのだろう。
今渡っているこの橋もすぐに落ちることになるが、この距離ならば問題ない。

そう、思っていた時だった。

「コナン君!」

蘭ちゃんの叫ぶような声が響く。
後方を振り返れば、上を見上げたコナン君が足を止めていた。

このままでは、彼は連絡橋と共に45階分下の地上へと落ちていってしまうだろう。
…私には、彼を助ける理由がない。
…ない、けれど…。

『チッ…』

パーティーということで、愛銃のコルトM1908の代わりに仕込んでいたワイヤーを取り出す。
そして、それを立ち尽くすコナン君の腕に巻きつけて引いた。

「え?…うわっ」
『…っ』

子供とはいえ、手袋もはめていない状況で、一人分の体重が手に巻きついたワイヤーにかかる。
痛む手にかまわずコナン君を引き寄せる。
それと同時に、彼の腕に巻いたワイヤーを外して収納した。

『走るわよ、コナン君』
「えっ…」

彼を腕に抱え、そのまま連絡橋を渡りきる。
B棟についたところで振り返れば、連絡橋は落ち、遠くにA棟が見えるだけだった。
蘭ちゃんも園子ちゃんも、一緒にいた女性たちも皆、無事にB棟まで到着している。

「危なかったね。連絡橋が落ちてくるなんて…」
「うん…」

園子ちゃんの言葉に、蘭ちゃんが同意する。
その時、私の腕の中でコナン君が身じろいだ。

『…平気?』
「あ、うん。ありがとう、朱音姉ちゃん」
「大丈夫?コナン君。朱音ちゃんもありがとう」
「うん、僕は平気だよ」
『気にしないで。みんな無事で良かった』
「ほんと。このガキんちょが立ち止まった時は、もうだめかと思ったもん」

園子ちゃんの言葉に、とっさに行動してしまったとはいえ、どう返そうか正直困った。
確かに、帝丹高校での任務は終わらせた。
私は容疑者から外れ、犯人も見つからず迷宮入りとなったが、あまりにも速く転校するのはやはり危険。
もう少しは、ここにいなければならない。

「私も驚いちゃった。朱音ちゃん、あの時何したの?」
『あの時…』

さて、どう答えようか。





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