Raison d'etre

□狐影
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side heroine.


『…?』
「どうした」

ジンから受け取ったソフトに触れてみて、違和感を覚えた。
その違和感の正体がわかると同時に、それまでイラついていた気持ちが高揚してくる。
こんな時間に起こされ、仕事へ出向いたのは無駄ではなかったみたいだ。

『このソフト、まだ温かいよ』

それはつまり、ソフトが置かれてからあまり時間が経っていないということ。

「ってことは…」
「あぁ、まだこの近辺に身を潜めているということだ。…ブルームーン、入り口を塞げ」
『了解』

そう、ソフトを持ってきた人間は、まだこの場にいる可能性が高い。
後でテープや吸い殻を回収することを考えても。

ジンの指示に、愛銃を片手にコインロッカーの入り口に立つ。
ジンとウォッカは二手に分かれ、ロッカーの並ぶ通路の両側から調べ始めた。
一列目、二列目も違う。

「残るはそこだけ。ずる賢い狐も、袋の鼠ってわけか」
「つまらねぇこと言ってんじゃねぇ」

最後の通路に、ジンとウォッカの持つ銃が向けられた───。


「…!」
『…ジン?』

暗くてよく見えないが、ジンが驚いているのはなんとなくわかった。

「っ、兄貴…誰もいませんぜ」

…そんなはず、ないのに。
思わずコインロッカーの出入り口からジンとウォッカも元へ行く。

『ジン、何して…』

するとジンは、何を思ったのか、ロッカーを上から順に開き出した。
しかし、一番下のロッカーが開きかけたところでその手を止まる。

「…大の大人が、こんなところに隠れられるわけねぇか」
『誰もいないなら、速く移動した方が良い』
「あぁ。姿を変えてずらかるぞ」

私たちのことを探っている、何者かがいる。
その事実が判明した今、慎重を期する必要がありそうだ。

「…次はねぇと思って気をつけろ。帰るぞ、ブルームーン」

前半はウォッカに、後半は私に。
ジンはそう言って、私の手を引いた。





to be continued... (back)

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