凍てつき刃を振りかざせ
□夢と取引
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必ず当たる予言をし、その後たちどころに死ぬと言われている妖怪。
また歴史に残る大凶事の前兆として生まれ、数々の予言をし、
凶事が終われば死ぬ、ともいわれている。
立ちすくんだ昌浩を凝視して、件はゆっくりと口を開く。
『…紅き炎の神の手はお前の血によって赤く染まり、
狂った神によってお前のすべて者達の灯が奪われる』
昌浩の胸の奥で、鼓動が不自然に跳ねる。
『神の血によりて黄泉の扉は開かれ、この地は沈む』
立ちすくむ昌浩を件は嗤う。
『お前のせいで全ての者は消え去る』
言い終えた件は、ぐらりと傾いてどうと倒れる。
そしてそのまま、崩れるようにして消え去る。
瞬きの内に件の放っていたおぞましい気配が消えると、もう一匹の件が現れた。
顔は先程の件と変わらないが、その頭には角がなかった。
『異邦の妖異蘇る。それと盟約を交わし、
その灯と引き換えに紅き炎を再び燃え上がらせろ』
言うな否や、昌浩の視界は闇に包まれ再び気が付いた時には何もなかった。
昌浩は詰めていた息を一つをつき空を仰いだ。
空は暗く雲も月も何もない。
ただただ空間がそこにあるだけ。
普段であれば夢だからと、思えるのだが今回は違った。
まるで、これからの未来を示しているようでひどく恐ろしかった。