IF〜もしもの世界〜
□淡花の願いをつかみとれ
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謎の怪僧と対峙していた妖はふと、自分の名前を呼ばれた気がして一瞬気がそれた。
その一瞬をつき、間合いを取るとそうは錫杖を打った。
小環がけたたましく鳴り響く。反響したいくつもの音色が呪力と化して彼らに襲いかかる。
騰蛇、勾陳、妖はそれぞれ通力で障壁を気づき防御するも彼らの視界を奪った。
僧の姿は、そのまま忽然と消えた。
「逃げたか…。十二神将、大丈夫…じゃ、ないか」
肩越しに妖は視線を後ろの二人に向け、その傷の酷さに眉をひそめた。
彼らは先ほどの蔦で全身傷だらけで血がにじんでいる。
神将だからこそ、意識を失わずにいられているが人間だったら衝撃のあまり命を落としていそうなほどそれは酷かった。
妖は、騰蛇に手を貸してもらい何とか立ち上がった勾陳の近くまで歩み寄る。
まっすぐ自分を見下ろす視線を勾陣は真正面から受け止めた。
身長は謄蛇よりも低く、勾陣を幾分か越している。
年は十代後半から二十歳ぐらいだろうか。
纏っている紫苑の衣は肩と胸元から下を覆うもので、袖が長く、その下ののど元まである肩無しの衣は朱雀の物と似ている。二重に巻かれた糸。
茶色の長い髪から除く精悍さを帯びた顔を顰めると、妖は勾陣の一番ひどいのど元の傷に手を伸ばした。
「何のつもりだ」
勾陳は妖を睥睨すると相手は少し怯んだ様子を見せたが、すぐ口の中で小さく何かを唱え始めた。
喉の傷の所に清浄な霊気が流れ込んだかと思うと痛みは引き、薄皮が張っていた。
それを見ていた騰蛇は目を見張った。
「…すごいな」
素直に感想を漏らすと妖は顔にほんの少し気色を乗せた。
「あ…ありがとう…」
すごいと言われたことが嬉しかったのか、妖は礼を言う。
勾陳は首の傷があった所に手をやると、妖を眺めた。
−−今の霊力、あれによく似ている。
もしあの時、生き返っていたのだとしたら…
しかし、その考えをすぐさま打ち払った。
いや、これは完全な妖怪だ。人の気配はしないし、外見も幾分か上だ。
ならなぜこんなにも似ている…。
あとからあとから湧いてくる疑問に勾陳は眉をひそめた。
あとがき
やっと本編が始まりました!
ネタは窮奇パロと同時期の物で、三話ぐらい書いていたのですがあれよこれよの間に今に至ると・・・
設定画(イラスト)は別館に載せていましたが、別館ともども消してしまいました。(スミマセン)
いろいろ抜けてたり、違ったり…
まぁ、こんな感じかな程度で見て下さい。
2012/07/19 14:56 | 青藍編 13/01/11 19:15 更新