捧げ物

□故郷
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『誓いの言葉』の琥珀様へのブログ時代の相互お礼作品です。

では、比古と昌浩の話をどうぞ!

あと、後々急な移転のお詫びをします…。

お持ち帰りは琥珀様のみでお願いします。






人気のない山の中、鉄がぶつかり合う音が静寂を打ち破る。

「はあっ!」

気合と共に繰り出される細身の刃を弾き返すと、すぐさま踏み込み相手に自らの獲物を突き出す。

それを身をよじることにより避けた少女はそのまま地面に手をつく。

そのまま地面を転がり相手との距離を測りながら体制を整える。

息のあがっている少女に対し、対戦相手の少年は微かに息を乱しているだけだ。

それを見て目をすがめる少女に少年は肩をすくめた。

「仕方がないよ晶菜、男と女じゃ体力の差がある。そこはどうしようもないことだ」

「わかってるやい!」

「晶菜、口調が戻ってるよ」

がおうと吠える晶菜にたいして比古は冷静に諭す。

比古のもとに来てから早一年、十五となった晶菜はこの一年でだいぶ体力霊力諸々が上がって男にも負けないぐらい強くなった……ハズだ。

なのに、一度も比古に勝てたためしがない。

術を使っても避けられるし破られる。

剣の腕はまだまだ未熟。

体力勝負で挑めば今のように中断される。

「なんでだろう……」

「そりゃあまだまだ半人前で未熟だからだよ」

笑う比古をじとっと睨むと空を仰ぎ溜息をついた。

その目が眺めるのは遠い生まれた町。

今の生活に不満がある訳ではない。帰りたいと思っているわけでもない。

ただ、古傷がそうさせる。

捨てたはずの過去が迷いを生む。

急に黙り込んだ晶菜を見て比古は苦笑すると自らよりもやや低い位置にあるその頭をくしゃりと撫でた。

目を見開く彼女に彼は屈託ない笑顔を向けた。

「晶菜が“帰りたい”と思えば返すし、帰りたくないと思えばここにいていい。
けどさ、今のお前に家は、家族はここにある」

だから、そんな顔をするな

その気遣いに晶菜はただ頷くことしかできなかった。


2012/07/17のブログより。
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