凍てつき刃を振りかざせ
□序
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序章
『下れ………』
その言葉に、追い詰められていた心は堕ちてしまった。
暗赤色の空の中に、異国の建物が立ち並ぶ大きな町並み。
その中心に巨大で豪華な建物があった。
その中の一部屋にそれの姿はあった。
彼は窓辺に腰掛け無感動な目で外の様子を見ていた。
すると、扉があき大きな鳥に似た妖異が現れた。
『昌影よ、主がお呼びだ』
窓辺に腰掛けていた昌浩…いや、昌影は鶚に二返事をし、窮奇が待つ王の間へ足を向けた。
「窮奇の呼び出しか…なんだろう」
目にかかる漆黒の前髪を掻き揚げながら思案した。
力はこの前あげたし、また誰かの傷を治してほしいとか?
…そういえば、昌浩の時は仇敵の傷を治したり、力をあげたりなどと普通に考えなかったな。
それは、自分が人でもなく陰陽師でもない存在になったせいかもしれない。
ふとそのことに気が付き、昌影は自嘲にも似た笑みを浮かべた。
――― 事の始まりは窮奇を倒し風音に命を狙われた直後の事だ。
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