凍てつき刃を振りかざせ
□むなしさ
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第十話 虚しさ
空が暗くなったころ物の怪は屋根の上で不機嫌そうに座っていた。
―――昌浩の様子がおかしい。
物の怪はそう思った。
何処がどう変だとは表現することは難しい。
しかし、はっきりしている部分と言えば光だ。
何時もは強い光で満ち溢れている瞳が今日は弱々しい。
何かあったかと尋ねてもはぐらかされてしまう。
「昌浩……何があったんだ」
溜息を深々とついていると勾陳が傍らに顕現してきた。
「どうした騰蛇。あれと喧嘩でもしたのか?」
なぜ喧嘩…。
形容しがたい気持ちが心中を渦巻いたがそれは横に置いておくことにした。
「昌浩に頼まれてな。暫らく一人で考えたいんだと」
「なにを?」
「まぁ、いろいろとらしい」
「追い出されたのか」
物の怪は沈黙をもって返す。
沈黙を肯定と解釈した勾陳は物の怪の隣に腰を落とした。
「……星がきれいだな」
「……」
勾陳につられて物の怪は空を見上げた。
虚しい。
そう思った。