いただきもの
□物の怪がいない訳
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それはある昼下がり。
まだ、昌浩が道冬達と出会って間もなく、そして陰陽療に通う前日のこと。
鳥たちも羽を休め、ほかの動物たちも日向ぼっこをしたりとのんびりとした雰囲気の中、突然それを遮る大声が響いた。
「だーかーら!!ダメだって言ってるだろ!?ここは前とは違うんだ!!気付かれるに決まってる!!ぜーっったいにダ・メ!!!」
《大丈夫だろ、隠形すれば気付かれないし俺が見える奴は少ないだろうし安倍家の者に見つからなければいいだろう!!》
「いーや!絶対見つかる!!だって世界が違ったとしても(狸であろうが無かろうが)あの安倍晴明なんだぞ!!」
なぜこんなことになっているのかは会話で大体予想がつくだろうが一応説明しておこう。
なぜ昌浩がこんなに怒っているのかというとそれは数分前にさかのぼる…
数分前――――
《いよいよ明日からだな》
「そうだね。前の陰陽療とどこが違うのか楽しみだ。それに道冬も」
昌浩達は明日から通う陰陽療の準備をしていた。
鼻歌を歌いながら機嫌よく準備をしている昌浩の隣で物の怪が何気なしにそして当たり前のように言った。
《あ、そうそう。もちろん俺も付いて行くからな。陰陽療に》