IF〜もしもの世界〜

□淡花の願いをつかみとれ
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あの時、選ばなければ生きられなかった…。

たとえ、後悔するとしても。



◇◆ ◇◆


「懐かしいな」

眼下に碁盤の目が広がる場所にある一つの小さな影が降り立った。

本来小さな影にとって、来るはずのない場所で来ようとも思わなかった場所。

しかし、そうも言ってられない状況なので仕方がない。

影は纏っていた長布から顔の部分だけ下げ視線を碁盤の向こうに向けた。

しかし、その黒曜の瞳は街を見ているのではなく、どこか遠くを見ている。

あの山には、いや、この地には懐かしい記憶が眠っている。

そして、同時に胸をえぐる悲しい記憶もある。

無意識にあるはずのない腹の傷にそっと手を添えた。

「あの日からどれぐらい経ったんだろう」

自分の感覚では幾分か経っているようなのだが実際は、ほんの先日の事なのだろう。

――――あの時の声が蘇る。

『……あしきゆめ……』

それは、悲しく懐かしい声。

「……」

 暫らくした後、その小さな影は夜の闇に消えていった。








――――

当初『蘇芳編』としていたのですが新章・尸櫻編のパラレルを書きたくなったので変更しました。

2012/06/30 17:04
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序でネタバレしてましたが、つまんないかと思い序0.5を序としました。
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