IF〜もしもの世界〜
□現人の世の詩を聴け
3ページ/4ページ
だらりと、獣の背の上に力なく持たれる小さな体。
投げ出された腕を伝い、いくつもの血の筋か紅く描かれ、指先から滴り落ちる。
紙のように白くなって行く面差しに、死の影が迫っていることがはっきりとうかがえた。
「真鉄、こいつどうする?」
「とどめを刺すまでもない、放っておけば遠からずこの命は黄泉へと堕ちる」
「ここに置いて行くか…。そうだ、真鉄こいつを贄にしないか?」
狼のその言葉に、名案だという風にその首筋を叩く。
そして、子供の襟首を掴むと足元に流れる川目がげ叩き落とした。
紅い雫をこぼしながら川に落ちると、激流に紛れ、あっという間に見えなくなった。
そして、それを見送ると獣と青年は森の奥へと帰って行った。