凍てつき刃を振りかざせ

□夢と取引
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――何故、自分だけが動いているのだろう。


ふと、昌浩の頭にそんな疑問がよぎった。

自分が着ている狩衣は水にぬれて赤く染まっておりひどく重たくそして寒い。

自分の周りにいるものは皆赤い泉の中で倒れて動かない。

兄上、彰子、敏次殿……。

そして、大好きな祖父や守ると誓った大切な人も…。


――なんで?どうして冷たいの?なんで俺だけ?


茫然と座り込んでいると生ぬるく恐ろしい風が吹いて来た。


『それは、その者たちの未来…』

振り返るとそこには一匹の雄の子牛が立っていた。

しかし、その顔は牛ではなかった。

瞠目して凍りついたように動けない少年を見据える、いびつな人間の顔。

昌浩の脳裏にある一説が浮かぶ。

―――からだハ牛、面は人に似たるそれは…

「件…」
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