主食。
□プールと受けの悩み
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高校生のプールと言うのは、残念ながら女子と男子は別々で。
まぁ、要は男がプール使うときは男しかいないのだ。
だから普通は、水着を忘れた馬鹿以外は見学者はいないハズ。
普通は、の話だが。
《プールと受けの悩み》
3年Z組。
別名『問題児組』。
変わった人間が多いなどよく言われるクラスだ。
そのZ組のプールの時間。
見学者が、二人。
水着を忘れた馬鹿ではない。
こんな40℃超えなどと天気予報で言われていた日に水着を忘れるなんて馬鹿な真似はしない。
だからちゃんとロッカーの中に入っているのだ、水着は。
ただ、着る側に問題が。
「…おい、高杉。なんで見学でィ」
「てめぇに言われたくねぇ」
プールサイドにある、見学者用のベンチに座る二人。
見学者とは沖田と高杉だった。
「てめぇは元気そうじゃねぇかィ。泳いでこいよ」
「おめぇもな」
「俺ァ理由があるんでィ。サボんなよ高杉」
「残念だな。俺も理由があんだよ」
そこまで会話を進めた二人は、ふいとお互いそっぽを向き。
「((人には言えねぇ理由だけど))」
ぽつりと心の中で呟いた。
ふと、沖田の方をじっと高杉が見る。
「…沖田」
「なんでィ」
「首元にキスマーク見えてんぞ」
「な……っ」
高杉に指摘され、ぱっと首元を隠す沖田。
「クク…ッ。嘘だ。やっぱりそんな理由かよ」
「てめ…」
ニヤニヤと笑う高杉を睨み付ける沖田。
と、今度は沖田が高杉をじっと見つめた。
「高杉、首元。キスマーク見えてんのはアンタの方でさァ…」
「俺はその手には乗らねぇよ」
「嘘じゃねェ。ほら、鏡」
沖田はポケットから小さな鏡を取り出すと高杉に手渡した。
「………」
「アンタ、気づいてなかったんですかィ?」
「くそ…っ、銀八の野郎……」
高杉は鏡に映った自分の首元を見て悪態を吐いた。
「返す」
ぶっきらぼうに鏡を沖田に返すと、高杉は首元に手を添える。
沖田は鏡をポケットに仕舞うと、そのポケットからまた別の何かを取り出した。
「みっともねェ。これ使いなせェ」
高杉に差し出しのは絆創膏。
「へェ…。準備万端ってか?」
「うるせェ。何事にも備えが大事なんでさァ」
「ま、礼は言っとくぜ」
首元のキスマークに絆創膏を貼る高杉を横目で見ながら、沖田はふぅ…と深い溜め息を吐いた。
「…なんだよ」
「いや、お互いに大変だと思いやして」
そう言いながら、プールで気持ち良さそうに泳ぐ土方を殺意の籠った目で眺める。
40℃を超える今日。
首筋を伝うのは汗。
ふと、プール側が騒がしくなった。
「なんだァ?騒がしいな」
「何かあったのかィ?」
見ると、銀色にきらきら輝く頭が見える。
どうやら銀八が乱入してきたらしい。
「…先公が何やってんでィ」
沖田が呆れた声で呟く。
ばさっ
呟いた沖田の横を白い何かが横切った。
その白い何かは隣に座る高杉にかかる。
「んだよ!?」
高杉が苛立った声を出し、飛んできたものを手に取り見る。
それは銀八の白衣だった。
「晋ちゃーん、水着の上に着とけば入れるんじゃねぇのー?」
プールから顔を出し、ニヤニヤしながら高杉に告げる。
「てめ…っ」
銀八の横から土方も顔を出した。
「総悟も何か上着でも貸してやろうかー?」
こちらもニヤニヤと笑みを浮かべている。
プツリ
沖田と高杉の中で何かが切れた。
「「今日入れねェのは…」」
小さく言うと、二人はサイドにあるベンチを掲げた。
そして。
「「誰のせいだと思ってるんでィ!!/だァ!!」」
叫びながら銀八と土方のいるプールへ投げた。
そんな事もあり、プールは中止。
40℃を越える夏のある日のプール。
怪我人が出た、ただそれだけの話。
End.
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