ドSの''天然少女攻略本''
□第1話
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トントン…トントントン……。
深夜4時、真選組屯所の門をノックする音が響いた。
その音を奏でるのは少女。
大量の荷物を地面に置き、ひたすらにノックをする。
月明かりに照らされ、茶色の髪がキラキラと光った。
『そーくん、そーくん……』
しきりに誰かの名を呼ぶ。
だが…もちろん返事はない。
『そーくん……』
少女は悲しそうに呟いた。
―――――…
朝からやけに屯所内が騒がしい。
沖田は起きたときそう思った。
アイマスクを外し、目を擦る。
のそりと起き、戸を開け廊下を見る。
調度山崎が。
「おい、山崎ィ。なんの騒ぎでィ」
「おはようございます、沖田隊長。それより、聞いてないんですか?」
山崎はひとまず挨拶をし、本題へ。
「何がだィ?」
「いやぁ、屯所の門のとこに美少女が座って寝てたんですよ!すっごい美少女です!」
「へー……」
沖田は興味なさそうに聞いていた。
が、次の山崎発言で沖田の反応が変わった。
「只、誰が何を言ってもそこから動かないんですよ。そーくん、そーくんって言って……生憎、副長も局長も昼まで帰ってきませんし……ってアレ!?沖田さん!?」
沖田は聞き覚えのある呼び方に、もしかして、と思った。
寝間着のまま、山崎を捨てて門まで走っていった。
門のところに着くと、隊士の人だかりが。
「オメェら、どきなせェ」
沖田が声をかけると、サッと人が通れるスペースができる。
そこを進んでいくと、案の定少女が居た。
体操座りで顔を下に向けている。
顔は見えないが、見覚えのある髪……。
「おい、アンタもしかして……」
『そーくん!?』
沖田が話しかけると、少女はパッと上を向き沖田を見た。
「やっぱり…凛じゃないですかィ……」
沖田が微笑むと、凛と呼ばれた少女も微笑み返し沖田に抱きついた。
『そーくん…そーくん…!』
沖田は凛の頭を優しく撫でた。
「お、沖田隊長!!その美少女とどういった関係で!?」
「俺の彼女でs「あれ?凛じゃないか!!」…チッ、お帰りなせェ、近藤さん…土方……」
「総悟、なんだよその嫌そうな顔は」
近藤と土方がこっちに歩いてきた。
近藤は凛の傍まで行くと、頭を撫でる。
「久しぶりじゃないか凛、遊びにくるなら連絡を寄越しなさいと言っただろう。来る途中変な男に捕まらなかったか!?」
『大丈夫だよー』
「局長!!アンタ…お妙さんと言うものがいながら…他の女に手を出すなんて!!」
他の隊士が騒ぎ立てる。
「何を言ってるんだお前らは。凛は俺の妹だぞ?」
近藤はさも当然のように告げる。
「妹ォォォォ!?」
「なっ、凛」
『?うん、お兄ちゃん』
凛はにこにこと近藤を見ながら言った。
「全然似てねぇよ!!」
「ゴリラどころか天使じゃねぇか!!」
「妹とか有り得ん……」
隊士たちの呟きが聞こえる。
確かに似ていない。
沖田は凛を抱き寄せ、隊士たちに言った。
「凛に手ェ出したら殺すぜィ……」
黒い笑みを浮かべて。