ドSの''天然少女攻略本''

□第7話
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真選組女隊士の朝は早い。
凛は必ず他の隊士より30分前には起きるようにしている。

真選組に居候という形になっているため、少しでも手伝いを……と凛は思っていた。

『皆さんおはようございます!!』

凛は食堂のおばちゃん達に声を掛けた。

「あら凛ちゃん、おはよう」
「今日も早いわねー」
「凛ちゃん居ると助かるわぁ」

なんて口々におばちゃん達は言う。

それから凛は、隊服の上着だけを脱ぎエプロンを着る。
そして、食堂のテーブルにお皿などを並べたりする。

「凛ちゃーん、これもお願いねー」
『あ、はーい!!』

真選組に来て約3週間。
こうして、凛にも頼ってくれるおばちゃん達が凛は大好きだった。

凛が起きてから15分後に、土方が食堂へやって来る。

『あ、トシくんおはよー!!』
「ああ、おはよう凛。悪ィが、いつも通り頼む」
『はい!!分かりました!』

食堂に来た土方と入れ替わりで食堂を出ていく凛。

廊下を歩き、着いたのが沖田の部屋。
寝起きの悪い沖田を起こすのも、凛の日課となっていた。

コンコン。

一応ノックをするが、これまたいつも通り返事はない。

す……っ。

戸を引いて開け、中に入る。
真ん中に敷いてある布団にアイマスクをして規則的な呼吸をする沖田が寝ていた。

『おはようそーくん、朝だよー』
「ZZzzz…」

声を掛けるが、やはり起きない。
凛は沖田の布団をはいだ。

『そーくん朝だってば!』
「んー……凛…」

沖田は何やらもごもご言ったあと、また眠る。

『そーくん起ーきてー!』

沖田をゆさゆさと揺すった。

「んぁ…?あ…、おはよう、凛……」
『おはよう、そーくん』

こうして、やっと沖田が起きる。
因みに、他の隊士が起こすとその隊士は瀕死の状態で食堂に来る。

沖田を起こしたあと凛は沖田が着替えるのを部屋の外で待ち、一緒に食堂へ行く。

「あ、沖田隊長、凛ちゃんおはようございます!!」
「おはよう」
『おはようございます!』
「凛ちゃん今日も可愛いな……」
「だよなー……」
「だー!!彼女にしてぇ!!」
「おいそこ、凛をやらしい目で見んのは止めろィ」

食堂へ入ると、皆口々に挨拶をする。
朝から凛に熱烈なラブコールを浴びせる隊士達を沖田が適当にあしらい、席につく。
近藤、土方、凛、沖田の順に座り朝ご飯が始まる。

「おい、マヨネーズはどこだ」
『トシくん、ここだよ。はい』
「おう、ありがとう」
『あ、お兄ちゃんこぼれてるよ!!もう……いい歳にもなって恥ずかしいよー!』
「ああ、すまんすまん」
「凛、ちょっとこっち向きなせェ」
『ん?そーくん何……?』
「はい、あーん」
『そーくんまた好き嫌いしてるの?駄目だよ、大きくならないよ!!』

そんな感じでご飯を食べるのだが、隊士達は沖田達が羨ましくて仕方ない様子。

「沖田隊長も副長もずりィよな」
「いくら幼馴染みだからって……」
「ばっ、馬鹿、止めろよ!沖田隊長睨んでるぜ」

沖田の一睨みで解決するのだが。

ご飯が終わると、それぞれ仕事などを始める。
凛の場合は毎日ばらばらで、少し沖田の目が離れると、

「凛ちゃん、今日は俺と見廻り行こうよ」
「いや、俺と見廻り行こうぜ」
「そんなことより、俺と稽古しようよ!!」
「いやいやいや、俺とミントンしよ!」

なんてお誘いの嵐。

『で、でも私、今日別の仕事があって……』

苦笑いで断る凛。

「やっぱ可愛い、凛ちゃん!」
「俺と付き合おうよ」
「沖田隊長の彼女だろうが関係ない!!」
「アレ?彼女なの?」
「違う違う、幼馴染みだって」

まぁ、こんな風に凛の周りでわらわらとしていたらあの方に当然見つかるわけで。

「おーい、何やってんだァ?オメェら。仕事はどうした仕事は」

煙草を片手に睨みを利かせながら土方が歩いてきた。

「ふ、副長だァ!!」
「今からします!!」
「逃げろ!」

一目散に逃げていく隊士達。

「大丈夫か?凛」
『大丈夫だよ!!』

土方に向かってにこりと笑う。

「あ、ああ……//」

照れ隠しに煙草を吸う土方。
そんなまったりとした空間を気に食わないと見ている奴が一人。

「死ね土方ァァァァァ!」

土方にバズーカを向ける沖田。

ドカーン!!

見事に凛を避けて土方に当たったバズーカ。

「げほ…っげほ…っ…総悟テメェ…凛に当たりでもしたらどうしたんだよ!」
「俺がそんなヘマするわけないじゃないですかィ」

煙でむせながら土方は自信満々に言う沖田に怒鳴った。

『あ、そーくん良いところに!!』
「おーい、凛ちゃん?俺今殺されかけたんだけど。幼馴染み今天国行きかけたよ?なんかコメントねぇの?」
「なんでィ、凛」
『そーくんにお願いがあって……』
「無視か、いつもマイペースだな凛……」

勝手に話を進める沖田と凛にショックを受けつつ、立ち上がる土方。

「お願い?」
『そう。あのね、私に……』

凛はそこで一旦言葉を切ると、沖田の前に正座をした。

「凛?」
『私に、稽古をつけてください』

いつも通り平和な屯所の廊下。
凛の頼み、それは至極簡単で…沖田にとってはとても残酷な頼みだった。
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