ドSの''天然少女攻略本''

□第8話
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「着替えたか?」

沖田が部屋の外から凛に声を掛ける。

『うん、着替えた!!』

凛が稽古着を着て部屋から出てきた。

「なら着いてきなせェ」

一緒に真選組内の道場まで向かう。
廊下を歩いていると、凛と沖田が稽古をすると聞きつけた他の隊士達も一緒になって道場へ。

道場に着くと、沖田は凛に木刀を渡した。

「ハンデとは言っちゃあ何だが……木刀使いなせェ。俺ァ竹刀使う」

木刀を受け取った凛は、沖田を真っ直ぐ見据えて一言。

『駄目だよそーくん。そーくんも木刀使って』
「(やっぱり凛にハンデは無用かィ……)」

沖田は少し微笑んだあと、自分も木刀を手に取る。
稽古とは言えあの時と何ら代わりのない、斬り合いの対応を目的とした稽古。

「おいおい、いくら近藤局長の妹だからって沖田隊長と対等に木刀でなんざ無茶だろ」
「沖田隊長も酷だな」
「直ぐにやられちまうよ」

ギャラリーである隊士達は口々に言った。

「オメェら、凛がどのくらい刀使えるか知らねぇだろ」
「ふ、副長!!」

気がつくと土方も来ていた。

「よく見とけ。凛の強さを」


教えたのが総悟なんだ。
強ェに決まってらァ……。


凛と沖田は互いに5歩後退した。
しんと静まる道場。

ひゅっ!!

木刀が空を切る音が聞こえた。

カン―――ッ

そして、木刀がぶつかる音が響く。
凛も沖田も、1歩も引かない。

「(俺が教えた時と変わらねぇ……。むしろ、強くなった…)」

沖田は凛と刀を交えながら思った。
太刀筋も綺麗なまま。


きっと、俺が置いていったあとも毎日稽古したんだろィ……。


見に来ていた隊士達も静かに凛と沖田を見ていた。

「あれが…沖田隊長……」

皆、凛の腕にも驚いていたが、沖田の強さにも驚いていた。
普段、見廻りをサボり基本は寝て気が向けば土方を弄るという態度しか見たことがなかった隊士達。
確かに悪党相手に刀を本気で振るうことはあっても道場では…少なくとも隊士相手にはなかった。

「そんなに…強ェの……?」
「あんな華奢で愛らしいのに?」
「流石近藤局長の妹…」

隊士達は感嘆の声をあげた。

だが、いくら凛が強いとは言え、沖田に勝てるわけではない。

カン――――…ッ

『ぁ……っ!!』

再度ぶつかる音がし、凛の手から木刀が飛んでいった。

『やっぱりそーくんには敵わないなぁ』

凛は悔しそうに言いながら、疲れたように腰をおろした。
沖田はその場に木刀を置くと、凛の方へ歩き隣に座った。

「凛…強くなったな」

沖田は隣に居る凛の頭を撫でる。

『本当?でもまだまだこんなんじゃ駄目。もっと強くならなきゃ』

沖田に褒められ凛は内心喜んだが表には出さなかった。

『そーくん、また稽古しようね』
「俺が暇な時ならいいぜィ」
「オメェはいつも暇だろ」

そこに土方が乱入。

「なんでィ土方さん、俺達の会話に混ざりたいんですかィ?」
「違ェよ!ったく…稽古もいいが仕事しろ仕事」

土方のその一言により、道場に集まっていた隊士達は逃げるようにして持ち場へと戻っていった。
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